桃太郎

5話

478字 約1分 1999年1月8日 公開

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 日本一の桃太郎は犬猿雉の三匹と、人質に取った鬼の子供に宝物の車を引かせながら、得々(とくとく)と故郷へ凱旋(がいせん)した。――これだけはもう日本中(にほんじゅう)の子供のとうに知っている話である。しかし桃太郎は必ずしも幸福に一生を送った(わけ)ではない。鬼の子供は一人前(いちにんまえ)になると番人の雉を()み殺した上、たちまち鬼が島へ逐電(ちくでん)した。のみならず鬼が島に生き残った鬼は時々海を渡って来ては、桃太郎の屋形(やかた)へ火をつけたり、桃太郎の寝首(ねくび)をかこうとした。何でも猿の殺されたのは人違いだったらしいという(うわさ)である。桃太郎はこういう(かさ)(がさ)ねの不幸に嘆息(たんそく)()らさずにはいられなかった。

「どうも鬼というものの執念(しゅうねん)の深いのには困ったものだ。」

「やっと命を助けて頂いた御主人の大恩(だいおん)さえ忘れるとは()しからぬ奴等でございます。」

 犬も桃太郎の渋面(じゅうめん)を見ると、口惜(くや)しそうにいつも(うな)ったものである。

 その間も寂しい鬼が島の(いそ)には、美しい熱帯の月明(つきあか)りを浴びた鬼の若者が五六人、鬼が島の独立を計画するため、椰子(やし)の実に爆弾を仕こんでいた。(やさ)しい鬼の娘たちに恋をすることさえ忘れたのか、黙々と、しかし嬉しそうに茶碗(ちゃわん)ほどの目の玉を(かがや)かせながら。……

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