29話 とのさまの そうしき
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一休さんが、大ぶ としとってからの なかの よい ともだちに、にながわ しんざえもん と いう人が ありました。
しんざえもんは 一休さんの えらさに かんしんして、わざわざ じしゃぶぎょう と いう たかい やくめを やめ、一休さんの しんじゃに なった ひとでした。
一休さんと しんざえもんさんが いろいろな はなしを していると、ひとりの ぶしが 一休さんの いおりを たずねて きて、
「わたしは うえむら ないき と いうものの けらいですが、このたび とのさまが しにました。その ゆいごんに わしが しんだら ぜひ 一休さんに いんどうを わたして もらえ、と ありました。どうぞ ぜひ、ほとけさまに いんどうを わたして ください。」
と、たのみました。一休さんは、すぐ、
「しょうちした。」
と、こたえましたが、すぐ あとから、
「けれど、わしは おともが おおいぞ。それに、わしの ともは、ひとりに ついて、ぜに 一かんずつ もうしうける ことに なって いる。それを しょうち して くださるか?」
と、つけたしました。
「はい、かしこまりました。それでは よろしく おねがいいたします。」
と、いって けらいは かえりました。
それを そばで きいていた にながわ しんざえもんは ふしぎそうにして、一休さんに いいました。
「あなたは よくの ないかただと おもって いましたが、あんがい よくが ふかいのですね。」
「まあ、いいよ。しんざえもん、みておれ。」
一休さんは ただ にこにこと わらって、しんざえもんの ことばを ききながして いましたが、すぐ、
「さあ、しんざえもん、おまえにも ぜに 一かん もらって やるぞ。ついて こい。」
と いって、たちあがりました。
しんざえもんさんも、ははあ これは なにか わけが あるな、と きづきましたから、だまって 一休さんに ついて いきました。
五じょうの はしを わたって、むこうの かわらに でると、一休さんは、一つの こじきの こやに たちよりました。
「もくさん もくさん、ちょいと たのみじゃ。ぜに もうけじゃ。」
一休さんは ここの こじきと しりあいと みえて、そう よびました。
こじきの もくさんが でて きました。一休さんは、
「なん百にんでも いいから、おまえの しって いる こじきを みんな あつめて くれ。」
「なんですか、一休さん。」
「うえむら ないきの そうしきじゃ。」
一休さんは わけを はなして、
「あれは かねもちだから、うんと かねを もらって やるのだ。」
「それは おもしろいですね。では、さっそく あつめましょう。」
こじきの もくさんは、そこらじゅうの こじきを よびあつめ、京都じゅうの こじきを みな かりあつめました。
かぞえて みると 三百五十五にん あつまりました。
「さあ、それでは たのむ。」
一休さんは 三百五十五にんの こじきを ぞろぞろ つれて、とのさまの やしきに のりこみました。
いくら ともが おおいと いっても、三百五十五にんも くるとは おもいも かけなかった とのさまの やしきでは、びっくりして しまいましたが、かずを きめて やくそくしたわけでは ありませんから、しぶしぶ、三百五十五にんの こじきに、ぜに 一かんずつを はらいました。
一休さんは おかしさを かくして、しずかに いんどうを わたしました。
じひも せず、あくじも なさず しぬ ものは、ほとけも ほめず えんまも とがめず。
しんだ とのさまは ただ かねを ためるのが たのしみで、じひの こころを もたないで ゆうめいでした。そんな ひとの かねなら、こじきに やった ほうが いいと、一休さんは こういう ことを したのですが、つづけて こう いいました。
だいみょうも こじきも おなじ 月は月、水、火、風の うつけもの奴らッ!
にんげんは とのさまも こじきも おなじ にんげんだ、と いったのです。そう いった 一休さんの 目には なみだが あふれて いました。