一休さん

29話 とのさまの そうしき

1,694字 約3分 2021年6月25日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

 一休(いっきゅう)さんが、(だい)ぶ としとってからの なかの よい ともだちに、にながわ しんざえもん と いう(ひと)が ありました。

 しんざえもんは 一休(いっきゅう)さんの えらさに かんしんして、わざわざ じしゃぶぎょう と いう たかい やくめを やめ、一休(いっきゅう)さんの しんじゃに なった ひとでした。

 一休(いっきゅう)さんと しんざえもんさんが いろいろな はなしを していると、ひとりの ぶしが 一休(いっきゅう)さんの いおりを たずねて きて、

「わたしは うえむら ないき と いうものの けらいですが、このたび とのさまが しにました。その ゆいごんに わしが しんだら ぜひ 一休(いっきゅう)さんに いんどうを わたして もらえ、と ありました。どうぞ ぜひ、ほとけさまに いんどうを わたして ください。」

 と、たのみました。一休(いっきゅう)さんは、すぐ、

「しょうちした。」

 と、こたえましたが、すぐ あとから、

「けれど、わしは おともが おおいぞ。それに、わしの ともは、ひとりに ついて、ぜに 一かんずつ もうしうける ことに なって いる。それを しょうち して くださるか?」

 と、つけたしました。

「はい、かしこまりました。それでは よろしく おねがいいたします。」

 と、いって けらいは かえりました。

 それを そばで きいていた にながわ しんざえもんは ふしぎそうにして、一休(いっきゅう)さんに いいました。

「あなたは よくの ないかただと おもって いましたが、あんがい よくが ふかいのですね。」

「まあ、いいよ。しんざえもん、みておれ。」

 一休(いっきゅう)さんは ただ にこにこと わらって、しんざえもんの ことばを ききながして いましたが、すぐ、

「さあ、しんざえもん、おまえにも ぜに 一かん もらって やるぞ。ついて こい。」

 と いって、たちあがりました。

 しんざえもんさんも、ははあ これは なにか わけが あるな、と きづきましたから、だまって 一休(いっきゅう)さんに ついて いきました。

 五じょうの はしを わたって、むこうの かわらに でると、一休(いっきゅう)さんは、(ひと)つの こじきの こやに たちよりました。

「もくさん もくさん、ちょいと たのみじゃ。ぜに もうけじゃ。」

 一休(いっきゅう)さんは ここの こじきと しりあいと みえて、そう よびました。

 こじきの もくさんが でて きました。一休(いっきゅう)さんは、

「なん(びゃく)にんでも いいから、おまえの しって いる こじきを みんな あつめて くれ。」

「なんですか、一休(いっきゅう)さん。」

「うえむら ないきの そうしきじゃ。」

 一休(いっきゅう)さんは わけを はなして、

「あれは かねもちだから、うんと かねを もらって やるのだ。」

「それは おもしろいですね。では、さっそく あつめましょう。」

 こじきの もくさんは、そこらじゅうの こじきを よびあつめ、京都(きょうと)じゅうの こじきを みな かりあつめました。

かぞえて みると 三(びゃく)五十五にん あつまりました。

「さあ、それでは たのむ。」

 一休(いっきゅう)さんは 三(びゃく)五十五にんの こじきを ぞろぞろ つれて、とのさまの やしきに のりこみました。

 いくら ともが おおいと いっても、三(びゃく)五十五にんも くるとは おもいも かけなかった とのさまの やしきでは、びっくりして しまいましたが、かずを きめて やくそくしたわけでは ありませんから、しぶしぶ、三(びゃく)五十五にんの こじきに、ぜに 一かんずつを はらいました。

 一休(いっきゅう)さんは おかしさを かくして、しずかに いんどうを わたしました。

じひも せず、あくじも なさず しぬ ものは、ほとけも ほめず えんまも とがめず。

 しんだ とのさまは ただ かねを ためるのが たのしみで、じひの こころを もたないで ゆうめいでした。そんな ひとの かねなら、こじきに やった ほうが いいと、一休(いっきゅう)さんは こういう ことを したのですが、つづけて こう いいました。

だいみょうも こじきも おなじ (つき)(つき)(すい)()(ふう)の うつけもの()らッ!

 にんげんは とのさまも こじきも おなじ にんげんだ、と いったのです。そう いった 一休(いっきゅう)さんの ()には なみだが あふれて いました。

目次に戻る

目次