可愛い山

18話 山へ 六

479字 約1分 2016年3月17日 公開

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 この本は著者とジェレミーとがツーグスピッツェの登山を終えて、ホッホ・アルム・ヒュッテという山小舎へ帰って来たところから始まり、前に書いたような経過で、再びこの山小舎へ下りて来たところで終っている。小舎には「小父さん」と呼ばれる太った老人や、学校の先生や、若い娘や、案内者のイシドルやがいて、二人の英国人を愛想よく迎え入れ、盛に麦酒をのんではドイツ式の歌を唄っていると、案内者が一人入って来て、何か話す。すると――

 奇妙な沈黙が起った。不安な気分である。微笑は消え去り、真面目な調子の会話が行われた。そこで小父さんが我々のところへやって来た。彼さえも真面目な顔つきをしていたが、これは何故か悲哀的なものだった。

「登山家が四人ツーグスピッツェで行方不明になったのです」と彼はいった。「案内者は捜索に行かねばなりません。昨日の晩方以来行方不明なのです。」

「どこで?」私は真顔で訊ねた。

「ヘレンタールへの路でです。氷河の上で路に迷ったに違いないということです。霧が起って来ましたからな。」

「そうですね。知っています」と私はいった。

 ジェレミーと私とは顔を見合せた。

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