可愛い山

8話 アル中種々相 総論

729字 約1分 2016年3月17日 公開

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 このアル中は、アルコール中毒ではなくて、アルプス中毒である。

 アルプス中毒とは何かというに、それは登山者が登山中、又は時として都会生活(日常生活の意味)中に示す、一種のマニアックなシンプトンによって、それと知られる一種のマニアで、所謂山岳病が肉体的で異常であるのに対し、これは精神的の異常である。従って精神的山岳病と呼んでもいい訳だが、アル中の方が人が間違いそうで面白いから、わざとこうしておいた。

 以下、各項にわけて、アル中の各シンプトンを詳説するに当り、一言申し述べたいことがある。登山者の性癖を、あるいはメタルオンチとか、道具オンチとかに分類し、もってキャンプ・ファイヤの談笑の材料とすることは、決して新しいことではなく、すでに、すくなくとも、僕等の間にあっては、数年前から行われている。僕は然し、それをここに蒸しかえそうとはしない。事実、その後の数年間における登山界の進歩は目ざましいもので、登山者の数が増すと共に以前は精々「オンチ」で済んでいたのが、今ではマニアになった患者が多い。だから、昔ながらのシンプトン以外に、新しいものが大分多くなって来た。

 最後に、筆者としての僕の立場について、多少の説明をする。ある本屋さんの新聞広告によると、僕は「最もスマートな山男」だそうだが、そんなことはなく、僕は「最も懶惰なる山男」で、即ち山は登るよりも、その中腹の草原にねころがって、煙草を吸った方が遥かにいいと思い、且つそれを実行している。そんなことなら、山へ行かなくてもよさそうなものだが、僕自身がかなりアル中患者なので、どうもやはり、山へ行かぬと気が済まぬ。このような僕だから、かなりの同情と理解を以て、アルプス中毒のことを書き得ることと思っている。

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