おばけの正体

113話 おばけの正体 第一一三項 狐の偽物

405字 約1分 2016年6月5日 公開

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 ある人の書いたものの中に見えていたが、尾州名古屋、某氏の別荘に奇樹、怪石相連なり、園中に広き池ありて魚鳥ここに集まり、楼広くして高く、風景絶佳の仙境である。ここに老僕住みてこれを守り、来客あればもとめに応じて席を貸すことに定めてある。ある日、紳士五、六人、酒肴(しゅこう)を携えてここに遊び、終日歓を尽くし、帰るに臨んで(しもべ)に一包みを与え、借料の礼なりといい、「そのほか階上に(さかな)の折り詰めを残しておいたが、これは貴方に与うるから晩食のときに食せよ」といいつつ立ち去った。僕はその受け取ったる紙包みを開いて見れば、木の葉のみである。また、折り詰めを開けば馬糞(ばふん)が詰めてある。そこで僕は、「さきに紳士と思いしは狐であった。狐のためにだまされしは残念である」と申したそうだ。しかるにその出来事は、世の好事者(こうずしゃ)が老僕をだまするために、悪戯をしたのであるとのことだ。世には狐が人をだますにあらずして、人が人をだますことが多い。油断大敵。

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