おばけの正体

125話 おばけの正体 第一二五項 天狗祭りの起因

455字 約1分 2016年6月5日 公開

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 今より数年前、『岐阜日日新聞』に「愚民の妄信」と題して、天狗祭りの記事を掲げてあった。その前年は、害虫のために稲作皆無になったことがある。

 飛騨(ひだ)国大野郡辺りにてこのごろ流行する天狗祭りの起由(おこり)を聞くに、越中国東礪波(ひがしとなみ)郡の増太郎といえるもの、一日天狗にさらわれたりしが、このほどふと帰村していえるよう、「二十七、八年の日清戦争に、わが国が首尾よく勝利を得しは、ひとえに天狗の助けなり。さるを、国民は少しも天狗を祭りて謝意を表せざるにより非常に憤怒し、現に昨年のごときは、種々の害虫を下してこれを罰したまえり。本年も再び、同様害虫を下したまうべし」といいたりとの訛言(かげん)、飛騨一円に伝わり、同国各町村は競いて天狗祭りを執行し、神楽(かぐら)を担ぎ出して踊り回りおる由。目下、大野郡清見村小鳥地方にては、例の天狗祭りに狂いおるありさま、狐つきならで天狗つきとはこれらのことならん。

 世の天狗談は多くこの類であろう。ここに天狗にさらわれしとあるが、このことは一時の狂態であって、山林の中にさまよい、正気を失って夢の境界にいるのである。

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