3話 おばけの正体 第三項 幽霊の足音
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今一つ、余の幼少のときに実験したる話がある。年齢十五、六歳のころ、ある寺の座敷に寝たが、深夜になって目がさめ、四隣寂寥として草木も眠れるほどのうちに、本堂の方に当たりて、人の板敷きの場所を歩く音がハッキリ聞こえておる。その音はガタンガタンという響きだ。最初は盗賊が入り来たったのかと思ったけれども、盗賊ならばあのように足音を高くして歩くはずはない。その音が近くなるかと思えばまた遠くなり、いつまでもやまぬ。そこで、これは幽霊の寺参りであろうかとの想像を浮かべた。かつて檀家の者が死ぬときに、その亡者が寺へ参ると聞いていたが、これこそ亡者に相違ないと思った。しかし、翌朝になってみれば、半信半疑であるから、早々起きて本堂の方へ行ってたずねたれば、堂側に別室があって、その内に大なるボンボン時計がかかっていた。この時計のガタンガタンという音であったことがすぐ分かった。これは時計の幽霊と申すべきものであろう。