33話 おばけの正体 第三三項 壁間の怪音
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右に類似せる話が今一つある。先年、水戸市の士族屋敷の古屋を借りて住んだものがあった。その家は久しく空き家になっておったということだ。この家に引っ越して以来、深夜になると、座敷の床の間の裏に当たりて一種奇怪なる音がする。その音はモーンという声である。もし家の裏手へ回ってみると、座敷の中の方に聞こゆ。よって、家の内か外か分からぬ。いかにも不思議であって、なにか化け物の仕業であろうということになった。その話を聞いて、親類や友達が集まり通夜したことがあるも、みなその音の奇怪なるに驚かぬものはない。しかるに、そのうちの一人が申すには、床の間の壁の中に相違ないから、この壁を破って見ようというも、他の人は恐ろしがりて賛成するものがない。しかし、当人はドウしても見届けたいと思い、その音のする場所を目がけて一刀を差し込んだ。翌日この穴からのぞいて見たれば、床の間の壁と外の壁との間に、一尺ばかりの空所があった。その空所へ蜂が大いなる巣を作っていたことが知れ、夜分のモーンという怪音は、その巣に数百の蜂がやどっている所へ、鼠が蜂の子を取らんとてこれに触るると、その蜂がモーンと鳴いて騒ぎ立つる声であった。かく探検をきわめてみれば、なにも不思議でないが、世間普通の人は深く原因をたださずに、化け物の所業とするから妖怪が多くなるのだ。