おばけの正体

37話 おばけの正体 第三七項 金貨の幽霊

303字 約1分 2016年6月5日 公開

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 余は先年、某新聞にて読んだことを記憶している。その事柄は、東京新橋尾張町辺りに、夜ふけ、人()ね四隣静まりたる後、ある屋敷より、毎夜サラサラと紙ずれの音と、チャリンチャリンと金貨の響きの漏るるより、こは金銭に恨みを残して死したるものの亡霊でもあって、この音を発するものであろうとの評であったが、その実はしからず。その屋敷の中に、非常の締まり屋にて、金銭を貴ぶこと一方ならず、毎夜人の寝るころより夜明けまで必ず起きて、金庫の前に座し、その積もりし金をいちいち数えるのがなによりの楽しみにしているものがあって、夜半後にその当人の手にて数える音が、戸外に漏るるに至ったのであった。幽霊にも奇体の幽霊もあるものだ。

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