おばけの正体

36話 おばけの正体 第三六項 井筒の陰火

333字 約1分 2016年6月5日 公開

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 世間には狐火(きつねび)、鬼火と同じく、古井の中より青火を発することがある。その例は、先年発行の『毎日新聞』に出ていた。

 東京府下南葛飾郡葛西村字大島の共同井戸より、フトこのごろの五月雨(さみだれ)続く夜ごとのさびしさにつれて、青白き一団の陰火立ちのぼり、四、五尺の高さにてパッとかき消さるるを見たり。彼も見たりわれも見たりとて、おいおい(うわさ)広まりゆき、昨今はわざわざこれを見物せんとて近村より出かくる者もあるより、かかる場合の習慣にて種々の浮説これに伴って起こり、「かの井戸は何年前、これこれの女が恨みをのんで入水せしかば、その亡魂の夜な夜な不思議を現ずるものなるべし」など、真実らしく語り伝えて、夜に入れば、井筒の辺りは人山を築くばかりに集まれる由。

 これ、燐火(りんか)なることは明らかである。

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