44話 おばけの正体 第四四項 浅虫の怪談
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先年、青森県浅虫村に一大怪事の現出せしことがあって、その当時、全国の新聞に報道してあった。今ここにその大略を記すれば、浅虫の山手に当たる所に貸家がある。その家に突然、神棚にありし鈴が落ちきたり、そこに載せてあるろうそく立てが落ちきたり、その飛ぶや別に音なく、ただ落つる際に大いなる響きを発するのみである。これより引き続き種々の物品が飛び出し、茶碗が飛び、徳利が飛び、盆が飛び、はなはだしきは仏壇が飛び去ったという騒ぎである。この怪事を聞いて警察より出張して取り調べたるに、その借家に住する三人の女の仕事なることが発覚した。そのうちの一女が袖の下に箸を隠し持って、今しも投げ出さんとするところを見つけ、ほかの二女も詰問の結果、ついに白状するに至り、ツマリ、病的にあらずして、故意に出でたる悪戯なることが分かった。もしこの際、警察の探偵なかりせば発覚せずして、必ず狐狸、天狗の所為となって後世に伝わるであろう。