50話 おばけの正体 第五〇項 人間の狐業
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前の所業とよく似ている話を、余が先年芸州漫遊中に聞いたことがある。呉市のある豆腐屋へ、毎夜続いて油揚げ一枚だけ買いに来るものがある。その家にてはいかにも奇怪に思い、一夜主人が「あなたはどちらのお方ですか」とたずねたれば、「今夜は実を明かして申さん。われは当市外に住する古狐である」と答えた。主人は平素稲荷信仰なれば大いに喜び、座敷へ通して饗応したれば、その者は、「今夜の御礼として、この裏通りに稲荷堂がある。そこへワシは毎夜出張するから、その堂内へ金を包みてお上げなさるれば、必ず二倍にしてお返しいたそう」と申して立ち去った。主人これを信じ、翌日十銭を包みて供えたれば、その翌日には二十銭となり、五十銭を供うれば一円となっている。そこで、そのつぎには数十円を供えたれば、包みの中に一銭もなく、全く取られてしまったということだ。後に調べてもらったれば、盗賊の奸策であったそうだ。野にすむ狐よりも、人の狐がいちばん恐ろしい。