52話 おばけの正体 第五二項 鬼子の鑑定
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豊後大分町にて、ある者の妻が懐妊して某教会に至ったところが、「その懐妊せる子は鬼の形をしているから、今より神に祈祷せなければ恐ろしき鬼子を産み出だすべし。早く祈祷を頼むがよい」と勧められた。妻は自宅へ帰ってそのことを亭主に告げたるに、亭主は「よろしく祈祷を請うべし」と申し、妻をして参社せしめ、さらに自ら餅を作り、その中に餡の代わりに馬糞を包み込み、祈祷の御礼に出かけ、「ただ今、妻の胎児が鬼子なりとて御祈祷下され、ありがとうござります。これは手製の餅であるから御礼に差し上げます」と申したれば、教会の方では喜んで受け取り、二、三の者相寄って食せんとするに、中に馬糞が入っているに驚き、不都合千万なりとて当人を詰責したれば、亭主答えて申すには、「わが妻の胎内に鬼の子のいることが分かるなら、この餅の中に馬糞のあることの知れぬはずはない。もし餅の中ですらも見透かすことができぬなら、胎児の分かるべき道理がない。その鑑定の当否をためさんと思って、この餅を差し上げたのである」といって、大争論をしたそうだ。このことは大分県滞在中に聞き込みたる話。