68話 おばけの正体 第六八項 天井の怪痕
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先年茨城県より、天井の怪物につき報道しきたりしことがあった。すなわち、水戸上市小学校教室の天井が白壁にて塗ってあるに、手六本、足六本の怪物の姿が黒々と現れているより、児童らがいずれも恐怖して、あるいは泣き出すもあり、あるいは飛び出すもありて、混雑を起こし、一時は世間の大評判となりたる由なるが、よく取り調べてみれば、手足の跡形のように見ゆるも、その実、新築の際、左官が壁を塗るときに、偶然汚点を天井にとどめたるものにして、化け物の所業でないことが、少しく心をとめて見ればすぐに分かる。しかるに、児童らは家庭において化け物話ばかり聞かされているから、怪物の跡のごとくに誤認して言い触らし、「一犬虚を吠えて万犬実を伝うる」の騒ぎとなりたる由。