7話 おばけの正体 第七項 幽霊の足跡
読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
読み上げの速さ
組み方
去るころ、奈良県の某新聞にも、「妖怪変化」と題して幽霊談が掲げてあった。その場所は同県磯城郡桜井町、某寺の境内である。この寺の墓地に毎夜十一過ぎになると、ハイカラ的丸髷の亡者が徘徊するとの噂が町内に広がり、物好きの男が第一番に正体を見あらわしてやらんと、しようもないところに力瘤を入れ、一夜、堂の裏に身をひそめて様子をうかがっていたそうだ。初秋の夜も沈々と更けた十二時すぎになると、アーラ不思議や、忽然として一人の女に化けた妖怪が現れ、累々と並んでいる石碑の間を歩いて行くのを見届けたから、翌朝再びその場へ行ってみると、大正の化け物は違ったもので、足跡が点々と墓の間に残っている。そこで、その足跡は狐狸か幽霊かと思ってだんだん取り調べたところが、その近辺に一人の好男子が住んでいる。そこへほかより毎夜、これを慕っている婦人が通ってくるのであったそうだ。