おばけの正体

95話 おばけの正体 第九五項 釜鳴りの説明

457字 約1分 2016年6月5日 公開

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 民間にて伝うるところによれば、飯を炊く(かま)が偶然鳴り出すことがある。しかるときは、その家に凶事ありとて大いに恐るることになっている。その由来はシナに始まりて日本に伝わり、民間にて往々聞くことである。その起こる原因を知らざるものはいかにも不思議に思い、凶事の前兆予告のごとく考うるけれども、これ物理的自然の現象にして、決して怪しむに及ばぬ。もしその専門学者の説明によれば、蒸し物を釜の上に置くときは、その蒸し物が冷ややかなるために、釜中(ふちゅう)の湯よりのぼる蒸気が急に凝結して消えうするにより、その場所をみたさんために、空気が外より蒸し物の中に流れ込む。しかるときは、水蒸気の凝結が減ずるようになり、したがって空気の流入もやみ、ついで水蒸気が下より蒸し物の中に流通し来たり、再び水蒸気は急に凝結して、外より空気の流入を招くに至る。かくのごとく順次繰り返して、間断ある水蒸気の消失が波動を起こし、釜内の気体をして振起せしむるために、釜鳴りを生ずるに至るとのことである。さすれば、不意に釜鳴りが起こっても、決して恐るるに及ばぬ。

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