ノベリズ
怪談会 序
203字 約1分 2007年12月9日 公開
序
傳(つた)ふる處(ところ)の怪異(くわいい)の書(しよ)、多(おほ)くは徳育(とくいく)のために、訓戒(くんかい)のために、寓意(ぐうい)を談(だん)じて、勸懲(くわんちやう)の資(し)となすに過(す)ぎず。蓋(けだ)し教(をしへ)のために、彼(か)の鬼神(きしん)を煩(わづ)らはすもの也(なり)。人意(じんい)焉(いづくん)ぞ鬼神(きしん)の好惡(かうを)を察(さつ)し得(え)むや。察(さつ)せずして是(これ)を謂(い)ふ、いづれも世道(せだう)に執着(しうぢやく)して、其(そ)の眞相(しんさう)を過(あやま)つなり。聞(き)く、爰(こゝ)に記(しる)すものは皆(みな)事實(じじつ)なりと。讀(よ)む人(ひと)、其(そ)の走(はし)るもの汽車(きしや)に似(に)ず、飛(と)ぶもの鳥(とり)に似(に)ず、泳(およ)ぐもの魚(うを)に似(に)ず、美(び)なるもの世(よ)の廂髮(ひさしがみ)に似(に)ざる故(ゆゑ)を以(も)て、ちくらが沖(をき)となす勿(なか)れ。
泉 鏡花
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