ふしぎな人

9話 9 マンホール

1,294字 約3分 2016年7月16日 公開

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 二十めんそうは、大きなとらにへんそうして、木村さんの家のそばにある、こうしゅう電話の中ににげこみました。みんなが、そのまわりを取りまいていると、ドアが開いて、中から、ひとりのろうじんが出てきました。そして、さっきとびこんだとらは、かげも形も見えません。どこかへきえうせてしまったのです。

 みんなは、あっけにとられて、そのろうじんを見送っていましたが、ポケット小ぞうは、明智たんていのぶかに、なにかささやくと、そのまま、ろうじんのあとをつけていきました。ポケット小ぞうは、ポケットの中にはいるほど小さいといわれている少年ですから、あとをつけるには、つごうがいいのです。

 ろうじんは、大きな黒いふろしきづつみを小わきにかかえて、すたすたと歩いていきます。その歩き方が、とても早くて、すこしも年よりらしい様子がありません。

 ポケット小ぞうは、気づかれないように、ちょこちょこと、すばやくあとをつけました。

「ははん、わかったぞ。あのふろしきの中に、とらの皮が、まるめてつつんであるんだな。こうしゅう電話のはこの中で、それをぬいで、ろうじんのすがたになってあらわれたんだ。あいつは、さっき、木村さんのおし入れの中にかくれたとき、そこに用意しておいたふくや白いつけひげで、ろうじんにへんそうしたんだ。それから、とらの皮をかぶったんだ。だから、とらの皮さえぬげば、すぐにろうじんに化けられたんだ。一分間もかかりゃしない。二十めんそうのやつ、うまいことを考えたもんだな」

 ポケット小ぞうは、そんなことをぶつぶつつぶやきながら、なおもゆだんなく、ろうじんのあとをつけていきました。

 ろうじんは、さびしい方へ歩いていきます。夜ふけのことですから、あたりは、まっ暗です。

 すると、ろうじんが、立ち止まって、道にしゃがむのが、かすかに見えました。

「おやっ」

と思って、目をこらしていますと、ろうじんは、大きなまるいものを、地面からひき起こしているではありませんか。

「あっ、わかった。マンホールの鉄のふたをずらしているんだな」

 そうです。ろうじんは、マンホールのふたを開いて、その中へおりていこうとしているのです。

「あの中へかくれるつもりなのかな。だが、おれがつけていることは気がつかないんだから、なにも、かくれることはない。すると、……あっ、そうかもしれないぞっ」

 ポケット小ぞうは、そこに気がつきました。

 二十めんそうは、とんでもないことを考え出すやつですから、マンホールとそっくりのあなをこしらえて、そこから自分の住みかへ出入りしているのかもしれません。

 マンホールだと思えば、だれもあやしまないのですから、こんなによいひみつの出入口はありません。

 ろうじんは、マンホールにはいると、中から、鉄のふたをしめてしまいました。

 ポケット小ぞうは、急いでそこへ行って、鉄のふたに手をかけてみましたが、子どもの力で動かせるものではありません。

「よし、すぐ、みんなに、このことを知らせよう。そして、明智先生や小林さんと、電話でそうだんするんだ」

 そういって、ポケット小ぞうは、大急ぎで、もと来た方へ、かけだすのでした。

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