信濃国 明治三十二年

1話 信濃国 明治三十二年

433字 約1分 2010年1月21日 公開

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信濃の國は十州に

境つらぬる國にして

山は聳えて峯高く

川は流れて末遠し

松本伊那佐久善光寺

四つの平は肥沃の地

海こそなけれ物さはに

萬たらわぬことそなき

四方に聳ゆる山々は

御岳乘鞍駒か岳

淺間は殊に活火山

いつれも國の鎭めなり

流れ淀ます行く水は

北に犀川千曲川

南に木曽川天龍川

これまた國の固めなり

木曽の谷には眞木茂り

諏訪の湖には魚多し

民のかせぎは紙麻綿

五穀みのらむ里やある

しかのみならす桑取て

蠶養(コカヒ)の業の打ひらけ

細きよすかも輕からぬ

國の命をつなくなり

尋ねまほしき園原や

旅のやどりの寐覺の床

木曽の棧かけし世も

心してゆけ久米路橋

くる人多き束摩の湯

月の名にたつ姨捨山

しるき名所とみやびをが

詩歌によみてぞ傳へたる

旭將軍義仲も

仁科五郎信盛も

春臺太宰先生も

象山佐久間先生も

皆この國の人にして

文武のほまれたくひなく

山と聳へて世に仰き

川と流れて名は盡きす

吾妻はやとし日本武

嘆き給ひし碓氷山

うがつとんねる二十六

夢にも超ゆる車の道

道ひとすちに學ひなば

昔の人にや劣るべき

古來山河の秀でたる

國は偉人のあるならひ

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