夏

7話 今では

354字 約1分 2022年6月30日 公開

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 今では、N君も、K君も皆々細君を持つてゐる。N君にはもう子供さへある。

『もう、朝鮮には行かないんですか?』

 かう私が訊くと、

『何うも、この上ゐると、あそこの土になつて了はなければなりませんから……。将来の希望がないことはないんです。けども、あそこの百姓になつて了ふのには早いと思ひますから』

『それもさうだね』

『また、元の杢阿弥(もくあみ)で、暫く国でやるんです』

『それにしても、何年ゐたね、朝鮮に?』

『二年と少しゐました』

『汚ないさうぢやないか。あつちの百姓なんかなつてゐないつて言ふぢやないか……。その生活は此方で想像することの出来ないやうなもんだつて言ふぢやないか』

『まア、さうですな。ちよつと話したつて、先生なんかに想像が出来ないやうなもんですな』

『よくゐたね。それでも』

『…………』

 K君は黙つて私の方を見た。

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