23話 消閑雜詩 私の柱時計
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ある日、私は、ある場末の時計屋で古びた風變りな時計を一つ買つて來た。壁に掛けてから三時間以上もそれを眺めて、私は遊んだ。電燈がついてから、次のやうなものを書いた――
文字は喜のやうに鮮かな金
文字板は死のやうにまつ黒
ぐるりは花と葡萄葉との飾
振子と言へばたつた一房の
風に搖れるあまい葡萄の實
このよい柱時計の細工人は
無名でこそあつたがきつと
エピキュラス程の賢者だつた
美しい教はつつましいから
人に知られずに三十年の間
場末の店で塵まみれだつた
チクタクチクタクチクタク