8話 八
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小鳥たちは右の翼を大きな壺に、左の翼を小さな壺へ、めいめい躯から引き抜て投いれました。
「よろしい。これで二人の完全な人間が出来るであろう。私はこの人間に魂をいれてやろう、そして未来をいつまでも見とどけてやろう。もうお前達の役は済んだぞ」
と神様は、四つの小鳥達に優しく云ってお聞かせになりました。
またフイルムは廻転しました。
正面、神様の前に二つ置かれた大きな方の壺の傍には、見るから逞ましい人間がひとり、今一つ小さな壺の傍には、それよりも、ずっと美しい人間がひとり、立って居ます。
「男よ」
と神様は、大きな逞ましい人間をお呼びになりました。
「女よ」
と今度は小さく美しい人間を、神様はお呼びになりました。
「お前達は完全につくられた。さ。行って、お前達の生活をお始めなさい。私は、お前達の為に、別にお前達の棲む世界を用意して置いてやったのだ。お前達の眼に見果せぬ広い地と空と海と、日光とを私の領分から分けてやってあるのだ。おいで! 行って仲よく棲んで、多くの子孫をおもうけ!」
神様が斯う仰ると、人間の男と女は、恭しくおじぎをして、神様の前を去ろうとします。すると神様は、再び二人をお呼びとめになりました。
「これ、この壺を手にお持ち、このなかへ、私は、一粒ずつの「運命」の種を入れて置く。この種を大切に育てたら、お前達の幸福は、いつもこの壺のなかに、満ちて居るだろう」と仰いました。
男はまた、大きな壺をとって押し戴き、女は小さな壺をかかえて、頭を下げました。
最後に神様は仰いました。
「よいか。お前達をつくった小鳥たちは、私が生んだ卵から生れた。それで私は、とりもなおさず、お前達の一番はじめの親なのだ。お前達の世界へ行っても、私を忘れてはならない。お前達が、お前達の世界へ行って、もしそこで欲しいものや、願いごとを思い付いたら、お前達は、空を仰ぐか地に伏すかして、熱心に、私の名を呼んで祈るがよい。私は、それが、お前達のためによいとみとめたら、必ず与えるであろうから。では男よ。お前は小さな女をいたわって行け。女は、大きな男をうやまって暮らせ」
神様は斯う云い終って、男と女の頭に、交る交る手を一度ずつお置きになりました。
この時、突然、フイルムは、ばったり閉じられてしまいました。トシオは、
「あっ」
と驚いて、思わず手に持って居た眼鏡を下へ取り落しました。
「もういいのだ。トシオ! すべて、お前に見せることは済んだのだ」
と云い乍ら、お祖父さんはトシオの取り落した眼鏡を、拾い上げて丁寧にチリを払って、懐へ入れてしまいました。