2話 第一場
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場面。一方八重の遅桜、三本ばかり咲満ちたる中に、よろず屋の店見ゆ。鎖したる硝子戸に、綿、紙、反もの類。生椎茸あり。起癈散、清暑水など、いろいろに認む。一枚戸を開きたる土間に、卓子椅子を置く。ビール、サイダアの罎を並べ、菰かぶり一樽、焼酎の瓶見ゆ。この店の傍すぐに田圃。
一方、杉の生垣を長く、下、石垣にして、その根を小流走る。石垣にサフランの花咲き、雑草生ゆ。垣の内、新緑にして柳一本、道を覗きて枝垂る。背景勝手に、紫の木蓮あるもよし。よろず屋の店と、生垣との間、逕をあまして、あとすべて未だ耕さざる水田一面、水草を敷く。紫雲英の花あちこち、菜の花こぼれ咲く。逕をめぐり垣に添いて、次第に奥深き処、孟宗の竹藪と、槻の大樹あり。この蔭より山道をのぼる。
狭き土間、貧しき卓子に向って腰掛けたる人形使――辺栗藤次、鼻の下を横撫をしながら言う。うしろ向のままなり。
人形使 お旦那――お旦那――もう一杯注いで下せえ。
万屋 (店の硝子戸の内より土間に出づ)何もね、旦那に(お)の字には及ばないが、(苦笑して)親仁、先刻から大分明けたではないか。……そう飲んじゃあ稼げまいがなあ。
人形使 へ、へ、もう今日は稼いだ後だよ。お旦那の前だが、これから先は山道を塒へ帰るばかりだでね――ふらりふらりとよ。
万屋 親仁の、そのふらりふらりは、聞くまでもないのだがね、塒にはまだ刻限が早かろうが。――私も今日は、こうして一人で留守番だが、湯治場の橋一つ越したこっちは、この通り、ひっそり閑で、人通りのないくらい、修善寺は大した人出だ。親仁はこれからが稼ぎ時ではないのかい。
人形使 されば、この土地の人たちはじめ、諸国から入込んだ講中がな、媼、媽々、爺、孫、真黒で、とんとはや護摩の煙が渦を巻いているような騒ぎだ。――この、時々ばらばらと来る梅雨模様の雨にもめげねえ群集だでね。相当の稼ぎはあっただが、もうやがて、大師様が奥の院から修禅寺へお下りだ。――遠くの方で、ドーンドーンと、御輿の太鼓の音が聞えては、誰もこちとらに構い手はねえよ。庵を上げた見世物の、じゃ、じゃん、じゃんも、音を潜めただからね――橋をこっちへ、はい、あばよと、……ははは、――晩景から、また一稼ぎ、みっちりと稼げるだが、今日の飲代にさえありつけば、この上の欲はねえ。――罷り違ったにした処で、往生寂滅をするばかり。(ぐったりと叩頭して、頭の上へ硝子杯を突出す)――お旦那、もう一杯、注いで下せえ。
万屋 船幽霊が、柄杓を貸せといった手つきだな。――底ぬけと云うは、これからはじまった事かも知れない。……商売だからいくらでも売りはするが。(呑口を捻る)――親仁、またそこらへ打倒れては不可いよ。
人形使 往生寂滅をするばかり。(がぶりと呑んで掌をチュウと吸う)別して今日は御命日だ――弘法様が速に金ぴかものの自動車へ、相乗にお引取り下されますてね。
万屋 弘法様がお引取り下さるなら世話はないがね、村役場のお手数になっては大変だ。ほどにしておきなさいよ。(店の内に入らんとす。)
人形使 (大な声して)お旦那、もう一杯下せえ。
万屋 弘法様の御祭だ。芋が石になっては困る。……もの惜みをするようで可厭だから、ままよ、いくらでも飲みなさい。だが、いまの一合たっぷりを、もう一息にやったのかい。
人形使 これまでは雪見酒だで、五合一寸たちまちに消えるだよ。……これからがお花見酒だ。……お旦那、軒の八重桜は、三本揃って、……樹は若えがよく咲きました。満開だ。――一軒の門にこのくらい咲いた家は修善寺中に見当らねえだよ。――これを視めるのは無銭だ。酒は高価え、いや、しかし、見事だ。ああ、うめえ。
万屋 くだらない事を言いなさるな、酔ったな、親仁。……
人形使 これというも、酒の一杯や二杯ぐれえ、時たま肥料にお施しなされるで、弘法様の御利益だ。
万屋 詰らない世辞を言いなさんな。――全くこの辺、人通りのないのはひどい。……先刻、山越に立野から出るお稚児を二人、大勢で守立てて通ったきり、馬士も見掛けない。――留守は退屈だ――ああ太鼓が聞える。……
この太鼓は、棒にて荷いつりかけたるを、左右より、二人して両面をかわるがわる打つ音なり、ドーン、ドーンドーン、ドーンと幽に響く。
人形使 笙篳篥が、紋着袴だ。――消防夫が揃って警護で、お稚児がついての。あとさきの坊様は、香を焚かっしゃる、御経を読まっしゃる。御輿舁ぎは奥の院十八軒の若い衆が水干烏帽子だ。――南無大師、遍照金剛ッ! 道の左右は人間の黒山だ。お捻の雨が降る。……村の嫁女は振袖で拝みに出る。独鈷の湯からは婆様が裸体で飛出す――あははは、やれさてこれが反対なら、弘法様は嬉しかんべい。
万屋 勝手にしろ、罰の当った。(店へ入る。)
人形使 南無大師遍照金剛。――(ちびりとのみつつ、ぐたりとなる。)
夫人、雨傘をすぼめ、柄を片手に提げ、手提を持添う。櫛巻、引かけ帯、駒下駄にて出づ。その遅桜を視め、
夫人 まあ、綺麗だこと――苦労をして、よく、こんなに――(間)……お礼を言いたいようだよ――ああ、ほんとうに綺麗だよ。よく、お咲きだこと。(かくて、小流に添いつつ行く。石がきにサフランの花を見つつ心付く)あら鯉が、大な鯉が、――(小流を覗く)まあ、死んでるんだよ。
やや長き間。――衝と避けて、立離るる時、その石垣に立掛けたる人形つかいの傀儡目に留る。あやつりの竹の先に、白拍子の舞の姿、美しく《ろう》たけたり。夫人熟と視て立停る。無言。雨の音。
ああ、降って来た。(井菊と大きくしるしたる番傘を開く)まあ、人形が泣くように、目にも睫毛にも雫がかかってさ。……(傘を人形にかざして庇う。)
人形使 (短き暖簾を頭にて分け、口大く、皺深く、眉迫り、ごま塩髯硬く、真赤に酔いしれたる面を出し、夫人のその姿をじろりと視る。はじめ投頭巾を被りたる間、おもて柔和なり。いま頭巾を脱いだる四角な額に、白髪長くすくすくとして面凄じ。)
画家 (薄色の中折帽、うすき外套を着たり。細面にして清く痩す。半ば眠れるがごとき目ざし、通りたる鼻下に白き毛の少し交りたる髭をきれいに揃えて短く摘む。おもての色やや沈み、温和にして、しかも威容あり。旅館の貸下駄にて、雨に懸念せず、ステッキを静につき、一度桜を見る。)
人形使 (この時また土間の卓子にむかってうつむく。)
画家 (夫人の身近に、何等の介意なき態度)ははあ、操りですな。
夫人 先生――ですか、あの、これは私のじゃあございませんの。
画家 (はじめて心付きたる状にて)どうも、これは失礼しました。いや、端から貴女がなさると思った次第でもありません。ちょっと今時珍しかったものですから。――近頃は東京では、場末の縁日にも余り見掛けなくなりました。……これは静でしょうな。裏を返すと弁慶が大長刀を持って威張っている。……その弁慶が、もう一つ変ると、赤い顱巻をしめた鮹になって、踊を踊るのですが、これには別に、そうした仕掛も、からくりもないようです。――(覗き覗き、済して夫人のさしかざしたる番傘の中へ半身)純、これは舞姫ばかりらしい。ああ、人形は名作だ。――御覧なさい凄いようです。……誰が持っていますか。……どうして、こんな処へほうり出しておきますかね。
夫人 人形つかいは――あすこで、(軽く指し、声を低くす)お酒を飲んでいるようですの。……そうらしいお爺さんが見えました。
画家 うまいでしょうな、きっと……一つ使わせてみとうございますね。
夫人 およしなさいまし、先生。……たいそう酔っているようですから。
画家 いかにも、酔っ払っていては面倒ですね。ああ、しかし、人形は名作です――帰途にまた出逢うかも知れない。(半ば呟く)貴女、失礼をいたしました。(冷然として山道の方へ行く。)
夫人 (二三歩あとに縋る)先生、あの……先生――どちらへ?
画家 (再びはじめて心付く)いや、(と軽く言う。間)……先生は弱りました。が、町も村も大変な雑鬧ですから、その山の方へ行ってみます。――貴女は、(おなじく眠れるがごとき目のまま)つい、お見それ申しましたが、おなじ宿にでもおいでなのですか。
夫人 ええ、じき(お傍にと言う意味籠る)……ですが、階下の奥に。あの……
画家 それはどうも――失礼します。(また行く。)
夫人 (一歩縋る)先生、あのここへいらっしゃりがけに、もしか、井菊の印半纏を着た男衆にお逢いなさりはしませんでしたか。
画家 ああ、逢いました。
夫人 何とも申しはいたしません?……
画家 (徐に腕を拱く)さあ……あの菊屋と野田屋へ向って渡る渡月橋とか云うのを渡りますと、欄干に、長い棹に、蓑を掛けたのが立ててあります。――この大師の市には、盛に蓑を売るようです。その看板だが、案山子の幟に挙げたようでおかしい、と思って、ぼんやり。――もっとも私も案山子に似てはいますが、(微笑む)一枚、買いたいけれども、荷になると思って見ていますと、成程、宿の男が通りかかりました。
夫人 ええ、そうして……
画家 ああそうです。(拱きたる腕を解く)……「そこに奥さまがおいでです。」と言って行き過ぎました。成程……貴女の事でしたか。お連になって一所に出掛けたとでも思ったでしょう――失礼します。
夫人 まあ、先生。……唯今は別々でしたけれど、昨夜おそく着きました時は、御一所でございましたわ。
画家 貴女と……
夫人 ええ。
画家 存じませんな。
夫人 大仁で。……自動車はつい別になりましたんですが、……おなじ時に、――
画家 私は乗合でしたがな――さよう……お一方、仕立てた方があったように思いますが、それは、至極当世風の髪も七三で……(と半ば言う。)
夫人 その女が……(やや息忙しく)その女が、先生、宿へ着きますと、すぐ、あの、眉毛を落しましたの。(顔を上げつつ、颯とはなじろむ)髪もこんなにぐるぐる巻にしたんです。
画家 ははあ。(いぶかしそうに、しかし冷静に聞くのみ。)
夫人 先生。(番傘を横に、うなだれて、さしうつむく。頸脚雪を欺く)宿の男衆が申したのは、余所の女房という意味ではないのです。(やや興奮しつつ)貴方の奥さまという意味でございました。
――間――
画家 (かくても、もの静に)……と仰有ると?
夫人 昨晩、同じ宿へ着きますと、直ぐ、宿の人に――私は島津先生の――あの私は……(口籠る。小間)お写真や、展覧会で、蔭ながらよく貴方を存じております。――「私は島津の家内ですが」と宿の人に――「実は見付からないようにおなじ汽車で、あとをつけて来たんです。」辻棲はちっと合ないかも存じませんが、そう云いましたの。……その次第は「島津は近頃浮気をして、余所の婦と、ここで逢曳をするらしい。」……
画家 私が。
夫人 貴方が、あの、そして、仮に私の旦那様が。
画家 それは少々怪しかりません。(苦笑する。)
夫人 堪忍して下さいまし。先生、――「座敷を別に、ここに忍んで、その浮気を見張るんだけれど、廊下などで不意に見附かっては不可いから、容子を変えるんだ。」とそう言って、……いきなり鏡台で、眉を落して、髪も解いて、羽織を脱いでほうり出して、帯もこんなに(なよやかに、頭を振向く)あの、蓮葉にしめて、「後生、内証だよ。」と堅く口止をしました上で、宿帳のお名のすぐあとへ……あの、申訳はありませんが、おなじくと……
画家 (微に眉を顰む。しかし寛容に)保養に来る場所ですから、そんな悪戯もいいでしょうな――失礼します。
夫人 あれ、先生、お怒りも遊ばさないで……
画家 綺麗な奥さんに悪戯をされて――かえって喜んでいるかも知れません。――しかし失礼します。
夫人 どうしましょう、先生、私……悪戯どころではありません。
画家 悪戯どころでないというは?(この時はじめて確と言う。)
夫人 (激して、やや震えながら)後生です。見て下さいまし。貴方に見て頂きたいものがあるんです。(外套の袖を引く、籠れる力に、画家を小流の縁に引戻す)ちょっと御覧なさいまし。
鯉を指す、死したる鯉、この時いまだ客者の目につかず。
画家 おお、これは酷い。――これは悲惨だ。
夫人 先生、私は、ここに死んで流れています、この鯉の、ほんの死際、一息前と同じ身の上でございます。
画家 (無言。……)
夫人 (間)私には厳しく追手が掛っております。見附かりますと、いまにも捉えられなければなりませんものですから。――途中でお姿をお見上げ申し、お宿まで慕って参って、急の思いつきで、失礼な事をいたしました。一生懸命なのです。そしてちょっとの間に、覚悟をしますつもりでおります。――眉を落して、形をかえて、貴方の奥さまになって隠れていましても、人出入の激しい旅館では、ちっとも心が落着きませんから、こうして道に迷っております。どうぞ、御堪忍なすって下さいまし。……夢にも悪戯ではないのですから。
画家 いたし方がありますまいな。
夫人 (もの足りなさに、本意なげにて)無理にもお許し下さいましたか。……その上なおお言葉に甘えますようですけれど、お散歩の方へ……たとい後へ離れましても、御一所に願えますと、立派に人目が忍べます。――貴方(弱く媚びて)どうぞ、お連れ下さいましな。
画家 (きっぱりと)それは迷惑です。
夫人 まあ。――いいえ、お連れ下さいましても、その間に、ただ(更に鯉を指す)この姿になります覚悟を極めますだけなんでございますもの。
画家 それは不可ませんな。御事情はどんなであろうと、この形になっては仕方がありません。
人形使 (つんのめりたるが猛然と面を擡げ)お旦那、もう一杯下せえ。お旦那。
画家 (この声を聞く。あえて心に留めず)私一人としてはこんな姿におなりなさるのだけは堅くお止め申します――失礼をします。(衝と離れて山手に赴く。)
夫人 (画家の姿、槻の樹立にかくれたる時、はらはらとあとを追い、また後戻りす。見送りつつ)はかないねえ!
わが声に、思わず四辺を視る。降らぬ雨に傘を開き、身を恥じてかくすがごとくにして、悄然と、画家と同じ道、おなじ樹立に姿を消す。
人形使 お旦那、もう一杯下せえ。
万屋 ちょッ、困らせるじゃあないか。(ついで与う。)
人形使 そのかわり、へ、へ、今度はまた月見酒だよ。雲がかかると満月がたちまちかくれる。(一息に煽切る)ああッ、う――い。……御勘定……(首にかけた汚き大蝦蟇口より、だらしなく紐を引いてぶら下りたる財布を絞り突銭する)弘法様も月もだがよ。銭も遍く金剛を照すだね。えい。(と立つ。脊高き痩脛、破股引にて、よたよた。酒屋は委細構わず、さっさと片づけて店へ引込む。)えい。(よたよた。やがて人形の前までよたよたよた)はッ、静御前様。(急に恐入ったる体にて、ほとんど土下座をするばかり。間。酔眼を鯉に見向く)やあ、兄弟、浮かばずにまだ居たな。獺が銜えたか、鼬が噛ったか知らねえが、わんぐりと歯形が残って、蛆がついては堪らねえ。先刻も見ていりゃ、野良犬が嗅いで嗅放しで失せおった。犬も食わねえとはこの事だ。おのれ竜にもなる奴が、前世の業か、死恥を曝すは不便だ。――俺が葬ってやるべえ。だが、蛇塚、猫塚、狐塚よ。塚といえば、これ突流すではあんめえ。土に埋めるだな、土葬にしべえ。(半ばくされたる鯉の、肥えて大なるを水より引上ぐ。客者に見ゆ)引導の文句は知らねえ。怨恨あるものには祟れ、化けて出て、木戸銭を、うんと取れ、喝!(財布と一所に懐中に捻じ込みたる頭巾に包み、腰に下げ、改って蹲る)はッ、静御前様。(咽喉に巻いたる古手拭を伸して、覆面す――さながら猿轡のごとくおのが口をば結う。この心は、美女に対して、熟柿臭きを憚るなり。人形の竹を高く引かつぐ。山手の方へ)えい。(よたよた。よたよたよた。)
夫人、樹立の蔭より、半ば出でてこの体を窺いつつあり。
人形使 えい。(よたよた)えい。(よたよたよた。)
夫人 (次第に立出で、あとへ引かえしざまにすれ違う。なおその人形使を凝視しつつ)爺さん、爺さん。
人形使 (丈高く、赤き面にて、じろりと不気味に見向く。魔のごとし。)
夫人 (大胆に、身近く寄る)私は何にも世の中に願はなし、何の望みも叶わなかったから、お前さんの望を叶えて上げよう。宝石も沢山ある。お金も持っています――失礼だけれど、お前さんの望むこと一つだけなら、きっと叶えて上げようと思うんだよ。望んでおくれな。爺さん、叶えさしておくんなさいな。
人形使 (無言のまま睨むがごとく見詰めつつ、しばらくして、路傍に朽ちし稲塚の下の古縄を拾い、ぶらりと提げ、じりじりと寄る。その縄、ぶるぶると動く。)
夫人 ああれ。(と退る。)
人形使 (ニヤリと笑う。)
夫人 ああ蛇かと思った。――もう蛇でも構わない。どうするの――どうするのよ。
人形使 (ものいわず、皺手をさしのべて、ただ招く。招きつつ、あとじさりに次第に樹立に入る。)
夫人 どうするのさ。どうするのよ。(おなじく次第に、かくて樹立に隠る。)
舞台しばらく空し。白き家鴨、五羽ばかり、一列に出でて田の草の間を漁る。行春の景を象徴するもののごとし。
馬士 (樹立より、馬を曳いて、あとを振向きつつ出づ。馬の背に米俵二俵。奉納。白米。南無大師遍照金剛の札を立つ)ああ気味の悪い。真昼間何事だんべい。いや、はあ、こげえな時、米が砂利になるではねえか。(眉毛に唾しつつ俵を探りて米を噛む)まず無事だ。(太鼓の音近く聞ゆ)――弘法様のお庇だんべい。ああ気味の悪い――いずれ魔ものだ、ああ恐怖え。
――廻る――