○○獣

11話 ドン助の行方

1,010字 約2分 2003年12月16日 公開

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 空き箱の奥のグニャリとするものにつきあたって、敬二少年は心臓がつぶれるほどおどろいた。何だろうと思って目をみはったとき「ごーッ」という音が耳に入った。大きな(いびき)であった。

「なんだ、こんなところに寝ているんだもの、どこを探したって分る筈がない」空き箱の中に窮屈(きゅうくつ)そうに、身体を、(ちぢ)めて寝こんでいるのは、行方不明になったドン助だった。酒の(におい)が箱のなかにプンプンにおっていた。

 敬二はドン助をそっと()りおこした。ところがそんなことで目のさめるような御当人(ごとうにん)ではなかった。といって箱のなかであるから、あまり音をたてては、ローラに知れる。そこで一策(いっさく)をかんがえて、ドン助のはりきった(ふと)ももをギューッとつねってやった。

「ああ、あいてて……」(ふく)れかけた鼻提灯(はなちょうちん)が、急にひっこんで、その代りドン助はバネ人形のように起きあがった。そこは(せま)い狭い箱の中だった。彼はいやというほど頭をぶっつけて、とうとう本当に眼をさました。

「やっ、貴様か。貴様はなんというひどい――」大口(おおぐち)開いてつかみかかってくるドン助を、敬二はあわててつきとばした。ドン助は赤ん坊のように、どたんと倒れた。

 敬二が早口(はやくち)に、あの黒眼鏡のローラがいまそこまで追っかけてきていることを告げると、さすがのドン助もこれが大いに()いたと見え、彼はたちまち頭をかかえて羊のごとくおとなしくなってしまった。

「そうか。そいつは弱ったな」

 敬二はこれまでの話を、手みじかに話してやった。それを聞いていたドン助は、

「いや、俺が慾ばりすぎて失敗したんだ。でもあの外国の女には第一番に話をしたんだから、あれは二十円の値打はあると思うよ。第二番以後は二円ずつ安くして、ニュースを売ってやったのだ。あれから皆で四、五十円も儲かったよ。だからつい()みすぎちまったんだ。わるく思うなよ」あの出鱈目(でたらめ)ニュースを、そんなに幾軒もの新聞に売ったと聞いて、敬二はドン助の心臓のつよさにおどろいた。

「へへえ、支配人が俺をとっちめるといってたかい。そいつは困ったな。あいつは柔道四段のゴロツキあがりだから、いま見つかりゃ肋骨(ろっこつ)の一本二本は折られると覚悟しなきゃならない。そいつは痛いし――」と腕をこまねいて、

「どうも弱った。仕方がない。夜になるまでここに隠れていよう」ドン助はごろりと音をたてて横になった。すると間もなく平和な鼾が聞えてきた。すっかりアルコールの(とりこ)となった彼の身体は、まだまだねむりをとらなければ足りないのであった。

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