17話 女流記者
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敬二の指した方を、大勢の人々は見てはっとした。
今やホテルの南側の窓下が、がりがりごりごりと盛んに噛られてゆき、見る見る大きな穴が明いてゆく。
「うわーッ、あれが○○獣だ」
「危いぞ。皆下がれ下がれ」
見物人は顔色をかえて、後へ尻込みをするのだった。
勇敢なのは、蟹寺博士だった。
博士はその前に、前かがみになって、じっと見つめている。
そのとき、敬二少年はドン助の行方が気になるので、しきりにそのあたりを探しまわってたが、何処を探してみてもいない。博士はドン助が木函ごと○○獣に噛られてしまったといったが、始めはそれが冗談と思っていたのに、だんだん冗談ではないことが敬二に分ってきた。
「もし、貴女はなぜその木屑をメリケン袋の中にぎゅうぎゅうつめこんでいるんですか」
と、黒眼鏡の外国婦人に声をかけた。
すると、かの外国婦人は、怒ったような顔を敬二の方に向けると、
「あなた、分りませんか。この木屑の中に、あなたの友達の身体が粉々になってありますのです。おお、可哀そうな人であります。わたくし、こうして置いて、後で手篤く葬ってやります。たいへんたいへん、気の毒な人です。みな、あの○○獣のせいです」
「すると、ドン助は○○獣に殺されて、身体はこの木屑と一緒に粉々になっているというのですか。本当ですか、それは――」
「本当です。わたくし、あなたたちのように嘘つきません」
「僕だって嘘なんかつきやしない」
と、敬二少年は腹を立ててみたが、とにかくもしそれが本当だとすると、この外国婦人は親切なひとだと思われる。
「貴女は一体どういう身分の方なんですか」
と、敬二は彼女に聞きたいと思っていたことを訊ねてみた。
「わたくしはメアリー・クリスという英国人です。タイムスという新聞社の特派員です。この○○獣の事件なかなか面白い、わたくし、本国へ通信をどんどん送っています。いや本国だけではない、世界中へ送っています」
「ははあ、女流新聞記者なのですか」
敬二は始めて合点がいったという顔をした。