三つのお人形

1話 一

1,228字 約2分 2021年11月25日 公開

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 外国人(がいこくじん)が、人形屋(にんぎょうや)へはいって、三つ並(なら)んでいた人形(にんぎょう)を、一つ、一つ手(て)にとってながめていました。どれも、同(おな)じ人形師(にんぎょうし)の手(て)で作(つく)られた、魂(たましい)のはいっている美(うつく)しい女(おんな)の人形(にんぎょう)でした。

 一つは、すわっていましたし、一つは立(た)っていました。そして、もう一つは、手(て)をあげて踊(おど)っていたのであります。

 どれを買(か)ったらいいだろうかと、その外国人(がいこくじん)は、ためらっていましたが、しまいに、つつましやかにすわっているのを買(か)うことにしました。それを箱(はこ)にいれてもらうと、大事(だいじ)そうにして、店(みせ)から出(で)ていってしまいました。

 残(のこ)った、二つの人形(にんぎょう)は、たがいに顔(かお)を見合(みあ)わせました。そして、そばに、だれもいなくなると、お話(はなし)をはじめたのです。

「とうとう、あの方(かた)は、いってしまいましたね。」

「わたしたちは、いつまでもいっしょにいたいと思(おも)いましたが、だめでした。このつぎには、だれが先(さき)にお別(わか)れしなければならないでしょうか……。」

 二つの人形(にんぎょう)は、心細(こころぼそ)そうにいいました。しかし、こうなることはわかっていたのです。美(うつく)しい、三つの人形(にんぎょう)が、はじめて、このにぎやかな街(まち)の店(みせ)さきにかざられたとき、通(とお)る人々(ひとびと)は、男(おとこ)も、女(おんな)もみんな振(ふ)り向(む)いてゆきました。きれいなお嬢(じょう)さんや、奥(おく)さまたちまでが、うっとりと見(み)とれてゆきました。人形(にんぎょう)は、世(よ)の中(なか)に、自分(じぶん)たちほど、美(うつく)しいものはないと思(おも)うと鼻(はな)が高(たか)かったのです。そして、だれでもが、にこやかな顔(かお)つきで、やさしい目(め)をして自分(じぶん)たちをながめますので、どこへいってもかわいがられるものと考(かんが)えました。

「どんな人(ひと)に、わたしは、つれられてゆきますかしらん。」と、三つの人形(にんぎょう)は、口々(くちぐち)にいって、行(ゆ)く末(すえ)のことを空想(くうそう)しますと、なんとなく、この世(よ)の中(なか)が、明(あか)るく、かぎりなく楽(たの)しいところに思(おも)われたのでした。

「どこへいっても、おたがいの身(み)の上(うえ)を知(し)らせ合(あ)って、おたよりをしましょうね。」と、お人形(にんぎょう)たちは、いったのでした。いま、二つになりました。

「あの方(かた)は、外国(がいこく)へつれられてゆくのでしょうか。」と、踊(おど)りながら、一つの人形(にんぎょう)は、立(た)っている人形(にんぎょう)にいいました。

「そうかもしれません。わたしは、外国(がいこく)へなど、ゆきたくないものです。けれど、あの方(かた)は、おとなしいから、どこへいってもかわいがられると思(おも)います。」

 こんなことを話(はな)していると、ふいに、店(みせ)さきへ、娘(むすめ)さんが立(た)ちました。そして、じっとふたりをながめていました。お人形(にんぎょう)は、急(きゅう)に、口(くち)をつぐんでしまいました。

 娘(むすめ)さんは、内(うち)へはいって、立(た)っている人形(にんぎょう)を指(ゆび)さして、見(み)せてくれといいました。それから、それを手(て)に取(と)ってよく見(み)ていたが、

「これをくださいな。」といった。

 こうして、二つの人形(にんぎょう)は、ついに買(か)われていってしまいました。そして、あとには、踊(おど)っている人形(にんぎょう)がただ一つだけ残(のこ)ったのであります。三つの人形(にんぎょう)は、こうして、べつべつになってしまったので、もはや、お話(はなし)をすることもできなくなりました。

「私(わたし)たちの親(した)しかったお友(とも)だちは、どうなったであろう……。」と、三つのお人形(にんぎょう)は、たがいに、胸(むね)のうちで思(おも)うよりほかなかったのです。

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