古事記 02 校註 古事記

25話 古事記 上つ卷 序并はせたり 〔豐玉毘賣の命〕

852字 約2分 2013年7月15日 公開

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 ここに(わた)の神の女豐玉(とよたま)毘賣の命、みづからまゐ出て白さく、「(あれ)すでに妊めるを、今(こう)む時になりぬ。こを念ふに、天つ神の御子、海原に生みまつるべきにあらず、かれまゐ出きつ」とまをしき。ここにすなはちその海邊の波限(なぎさ)に、鵜の羽を葺草(かや)にして、産殿(うぶや)を造りき。ここにその産殿(うぶや)、いまだ葺き合へねば、御腹の()きに()へざりければ、産殿に入りましき。ここに産みます時にあたりて、その日子(ひこ)一ぢに白して言はく、「およそ(あだ)し國の人は、(こう)む時になりては、(もと)つ國の形になりて生むなり。かれ、妾も今(もと)の身になりて産まむとす。願はくは妾をな見たまひそ」とまをしたまひき二。ここにその言を奇しと思ほして、そのまさに産みますを伺見(かきまみ)たまへば、八尋鰐になりて、匍匐()ひもこよひき三。すなはち見驚き畏みて、遁げ退()きたまひき。ここに豐玉(とよたま)毘賣の命、その伺見(かきまみ)たまひし事を知りて、うら(やさ)しとおもほして、その御子を生み置きて白さく、「(あれ)、恆は海道(うみつぢ)を通して、通はむと思ひき。然れども吾が形を伺見(かきまみ)たまひしが、いと《はづか》しきこと」とまをして、すなはち海坂(うなさか)()きて、返り入りたまひき。ここを以ちてその()みませる御子に名づけて、(あま)日高日子波限建鵜葺草葺合(ひこひこなぎさたけうがやふきあ)へずの命とまをす。然れども後には、その伺見(かきまみ)たまひし御心を恨みつつも、()ふる心にえ()へずして、その御子を(ひた)しまつる(よし)に因りて、その(いろと)玉依毘賣に附けて、歌獻りたまひき。その歌、

赤玉は 緒さへ(ひか)れど、

白玉の 君が(よそひ)し四

貴くありけり。  (歌謠番號八)

 かれその日子(ひこぢ)答へ歌よみしたまひしく、

(おき)つ鳥五 鴨著()く島に

我が率寢(ゐね)し 妹は忘れじ。

世の(ことごと)に。  (歌謠番號九)

 かれ日子穗穗出見の命は、高千穗の宮に五百八拾歳(いほちまりやそとせ)ましましき。御(はか)はその高千穗の山の西にあり。

一 ヒコホホデミの命。

二 この種の説話の要素の一である女子の命ずる禁止であり、男子がその禁を破ることによつて別離になる。イザナミの命の黄泉訪問の神話にもこれがあつた。

三 大きなワニになつて這いまわつた。

四 白玉のような君の容儀。下のシは強意の助詞。

五 説明による枕詞。

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