古事記 03 現代語訳 古事記

28話 トヨタマ姫

1,012字 約2分 2011年10月11日 公開

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――前の説話の續きで、男が禁止を破ることによつて、別離になることを語る。この種の説話の常型である。――

 ここに海神の女、トヨタマ姫の命が御自身で出ておいでになつて申しますには、「わたくしは以前から姙娠(にんしん)しておりますが、今御子を産むべき時になりました。これを思うに天の神の御子を海中でお()み申し上ぐべきではございませんから出て參りました」と申し上げました。そこでその海邊の波際(なぎさ)()の羽を屋根にして産室を造りましたが、その産室がまだ葺き終らないのに、御子が生まれそうになりましたから、産室におはいりになりました。その時夫の君に申されて言うには「すべて他國の者は子を産む時になれば、その本國の形になつて産むのです。それでわたくしももとの身になつて産もうと思いますが、わたくしを御覽遊ばしますな」と申されました。ところがその言葉を不思議に思われて、今盛んに子をお産みになる最中(さいちゆう)(のぞ)いて御覽になると、八丈もある長い鰐になつて()いのたくつておりました。そこで畏れ驚いて遁げ退きなさいました。しかるにトヨタマ姫の命は窺見(のぞきみ)なさつた事をお知りになつて、恥かしい事にお思いになつて御子を産み置いて「わたくしは常に海の道を通つて(かよ)おうと思つておりましたが、わたくしの形を(のぞ)いて御覽になつたのは恥かしいことです」と申して、海の道をふさいで歸つておしまいになりました。そこでお()まれになつた御子の名をアマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアヘズの命と申し上げます。しかしながら後には窺見(のぞきみ)なさつた御心を恨みながらも戀しさにお堪えなさらないで、その御子を御養育申し上げるために、その妹のタマヨリ姫を差しあげ、それに附けて歌を差しあげました。その歌は、

赤い玉は()までも光りますが、

白玉のような君のお姿は

(たつと)いことです。

 そこでその夫の君がお答えなさいました歌は、

水鳥(みずとり)(かも)()()く島で

(ちぎり)を結んだ私の妻は忘れられない。

世の終りまでも。

 このヒコホホデミの命は高千穗の宮に五百八十年おいでなさいました。御陵(ごりよう)はその高千穗の山の西にあります。

 アマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアヘズの命は、叔母のタマヨリ姫と結婚してお生みになつた御子の名は、イツセの命・イナヒの命・ミケヌの命・ワカミケヌの命、またの名はトヨミケヌの命、またの名はカムヤマトイハレ彦の命の四人です。ミケヌの命は波の高みを蹈んで海外の國へとお渡りになり、イナヒの命は母の國として海原におはいりになりました。

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