蛇性の執念

2話

500字 約1分 2012年12月19日 公開

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 日もありましょうのに、お目出度い結婚披露式の宴会なかばの事だったのです。書斎の机の上に俯伏したまま、冷たくなっている文夫さんが発見されたのは。

 机の右側の紙屑籠の中から見出された注射器と、空になったアンプレの四五本と、左の手首に赤くはれ上った注射の跡とによって、文夫さんは自殺と決定されました。何しろ結婚後僅かに四日目の出来事なので、大分新聞でも騒ぎましたが、間もなく余り評判もしなくなり、新聞にも出なくなりました。それは多分御本井男爵家側の運動のためだったろうと、私は考えて居ります。

 しかし文夫さんは何故死んだのでしょう?

 あの人に自殺しなければならないような原因は何もないはずです。大富豪御木井男爵家の嫡男と生れ、幼い時両親に死別したというのが不幸ではありますが、頭もいいし、風采も綺麗だし何一つ不自由なく育ったばかりか、相愛の綾子さんを得て、実に幸福の絶頂にあるのではありませんか。そういう恵まれた境遇に置かれたものが、何の理由なくぽっこり自殺してしまうなんて、そんな馬鹿々々しい話がありましょうか。

 その当時から、それは一つの疑問として、私には忘れられない宿題となっていたのでございます。

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