24話 23」は縦中横][#「23(2)
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僕は「深夜の市長」の付け髯と手紙とを胸に押しあてたまま、暫くは茫然としていた。今までどうもそんな気がしないこともなかったが、「深夜の市長」こそ深夜の勤務における黒河内警視総監の姿だったのか、いや黒河内総監こそは「深夜の市長」の昼間における勤務姿だったといった方がいいように思う。だがルンペンになった僕が、途端に「深夜の市長」に捨てられたことは大変寂しかった。
いや「深夜の市長」に捨てられたばかりでなく、その一党にも捨てられたことが後になってハッキリ分ってきた。その後、夜更けて幾度も丸の内十三号館を訪ねたが、あの聳え立っていた高塔も見えず、裏口の通路も見当らず、もちろん速水輪太郎にもお照にも会えなかった。夜の街の行きずりに、ルンペン爺さんの袂を引いて尋ねても、僕の顔を一と目見るなり顔を背けて、知らぬ知らぬと首を振るのだった。
僕は今でも、時折思いたっては、当て途もなく深夜の街を散歩する。そんなときは、今夜こそは、「深夜の市長」にパッタリ行き逢いそうな気がするのだが、不幸にして、その後一度も彼にも彼の一党にも巡り逢ったことがない。従って、彼等の残していった数々の謎も、いまだにやっぱりそのままになっている。