十和田湖

4話 四 休屋

572字 約1分 2021年6月10日 公開

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三十日、休屋さしてゆく。道太郎氏の子一雄氏、從弟小平四郎氏、あらたに加はる。共に少年の學生也。宇樽部より休屋まで、凡そ一里、老樹しげる。桂の大木も多し。蛇麻の花黄に、冠草の花紫也。車草、こゞみの生ひたるにても、日光に遠きことは知られたり。思ひがけずも、休屋の鈴木尚信、中村秀吉、川村藤五郎三氏、男女の生徒をつれて、われらを途に迎ふ。好意は細徑の草にもあらはれて、苅痕なほ新た也。

 休屋は、十和田諸部落の中心點也。十和田神社こゝに在り。奇景このあたりに集まる。祠官にして、兼ねて宿屋を營める織田與次郎氏の家にいたる。酒肴の饗應を受け、織田氏に導かれて出づ。十和田湖畔、杉は、唯こゝのみにありて、並木を爲して長くつゞく。十和田神社に詣づ。日本武尊を祀る。險しき巖山を攀づ。山に臨みて、南祖坊と、八郎太郎との祠あり。九間の鐵梯を下り、御占所にいたりて、中海に俯し、水を隔てて、御倉山を望む。學生四人、船に在り。みな五戸の人、われらを慕ひて、相前後して來り遊べる也。一行も之に乘りて船を發し、中海西岸の斷崖を見上げ、水中に孤立せる蝋燭岩あたりにいたりて、船を返しぬ。十和田湖前より別路を取り、大黒天、天の岩戸、金の神、山の神、火の神、風の神などの巖窟を見て、西海の濱に出で、近く惠比須島を見て歸途に就き、織田氏の家に小憩して、黄昏の頃、宇樽部に歸りぬ。

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