知多の野間で

4話 四

456字 約1分 2021年11月17日 公開

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 そこにある探幽の絵は、義朝最後のさまを描いて、立派な芸術であつた。その絵があるがために、その暗い悲劇が始めて浮ばれたやうな気がした。で、私も車の上でいろ/\なことを考へた。何うかして、これが書けないか。小説に出来ないか。戯曲にならないか。内海に上陸して、殺されるまでのことを仕組んでも立派なドラマになりはしないか。しかし、それだけでも好いが、もつと跡といふものを附け加へて、つまり私達がかうやつて数百年後に訪ねて行く心持をもつけ加へて、そして作品にすることは出来ないか。と、私の心にはハウプトマンの『エルガ』が思ひ出されて来た。あゝいふ風にでも仕組んだら何うか。旅客が一夜、そこに泊つて、そして昔を思ふといふやうにして仕組んで見たら、何うか。こんなことがそれからそれへと思ひ出されて常滑から名古屋の方まで来ても、それでもまだそのことが私の心に絡みついてゐた。松の鳴る下の五輪塔の墓、午後の日影の血のやうにさし透つた小さな池、丘の麓に残つてゐる御湯殿の跡――私は何うかしてそれをドラマにしたいと今でも思つてゐる。

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