2話 皆さんを科学に総動員したい
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まず第一に、私の考えましたことは、今日の時代ほど、わが日本が、急いで多数の科学者や技術者をほしがっている時期は、他にないのであります。皆さんもよく御承知のとおり、いまや全世界は、二つに分れて、世界戦争を始めかけています。今度の大戦は、どっちかを完全に叩きのめしてしまうまでは、やめにならないでしょう。そして勝敗いずれかの鍵は、民族的精神の強弱と、そしてもう一つは、科学力の強弱にかけられていると申してもよろしいのです。わが日本は、幸いにして、御稜威のもとに、建国二千六百余年の光輝ある国史をもち、軍人は忠勇無双、銃後国民も亦すこぶるりっぱです。この点ではどこの国にも負けません。しかしながら、ただ残念なことに、わが国の科学力は、正直な話が、たいへん貧弱であります。私どもは、日本の工業力が躍進したとか、日本人が世界的発明をしたとか耳にしますが、これを全体的に考え、かつしずかにおちついて調べてみますと、わが国一般国民の科学力は、とても一等国らしいところはなく、三等国以下ではないかと思われる節もあります。私も、実は工科学生として永い間勉強し、それから後十八年間も技術者として仕事をしてまいりました関係上、そこらのことは、よく存じているつもりであります。
そのような貧弱な科学国が、今度いよいよ国の運命を定める世界戦争に、うって出なければならなくなったのです。しかも、これまでならば、旧日本とでも申しますか、日本内地と植民地とそして満洲ぐらいを護っていればよかったのが、ここへ来まして、わが国の生命を安全に保つには、どうしても大東亜を日本が自ら親しく護り、かつ導かねばならぬことになったのです。今までのような小さい日本ではありません。急に日本が、おそろしくふくれあがったのです。それを護りとおすには、三等国以下の科学力で、果してうまくいくでしょうか。直接の国防科学力だけではない、建設に役立つ科学力も、同時に必要なのです。どんなに内輪に見つもりましても、わが国は、これまでの科学力に百倍する科学力を持たねばならないのです。しかも、それはぐずぐずしていられません。明日にもそれが欲しいのです。実に、さしせまった問題なのであります。ですから、これからの少年少女諸君も、みな手をかしてくださらなければ、困ります。てんでに科学力を備え、そして出来るだけたくさんの方々が、専門の科学者として勉強をはじめ、そして科学界に工業界に働いていただかなければ、日本は危いのです。こう申せばおわかりになったでしょう。