平和事業の将来

6話 〔黄禍、白禍〕

898字 約2分 2018年12月16日 公開

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 そこでだ、全体、欧羅巴(ヨーロッパ)人が東洋人を苦しめたという事が、東洋人の頭にはあるが、欧羅巴(ヨーロッパ)人には、昔東洋人が欧羅巴(ヨーロッパ)を荒らしたという頭がある。ある意味から言えば、御互いである。蒙古人などが行って、欧羅巴(ヨーロッパ)をよほど荒らした。未だ欧羅巴(ヨーロッパ)に騎兵のない時代で、蒙古の鉄騎を以て、ダニューブの平原などを蹂躙(じゅうりん)した。あたかも疾風の枯葉を駆る如く、欧羅巴(ヨーロッパ)を蹂躙した。(しか)して、その時は野蛮だから至る所掠奪(りゃくだつ)をやった。また騎兵だから、牧草のある所に行かねばならぬから、都会に永く陣営を張っていることが出来ぬ。そこで、都会に人がいると面倒だから、宝を(かす)めてあとは火を放って焼く。よほどえらいことをやった。成吉汗(ジンギスカン)の子孫が随分えらい事をやって、欧羅巴(ヨーロッパ)人をして戦慄させたのである。最後には土耳其(トルコ)人などもやった。そこで、欧羅巴(ヨーロッパ)人は、東洋人は非常に戦いを好み、(しか)して残忍無道なるものの如く思い、今までの歴史を見れば戦慄する如き恐怖心が起るのである。これがかつて黄禍論(こうかろん)となったのであるが、今度は白禍論だ(拍手)。欧羅巴(ヨーロッパ)人が来て、東洋人をいじめるのを、不平を言うけれども、よく考えてみると、かつて東洋人が欧羅巴(ヨーロッパ)人をいじめた、その報いである。しかしながら、それはいじめられて決算は着いたのである(拍手)。決算が着いたから、もはや争いを止めて(よろ)しかろうと思うが、なかなか止まぬのである。それ故、平和ということには、甚だ疑いがあるのである。今御話ししたような訳のものであれば、始終復讐ということが、起って来るのである。いわゆる圧力を加えれば反動が起る。アクションに対するリアクションは物理的の原則である。白人の圧力に対する黄色人の反動、黄色人の与えたるアクションに対する白人の反動。これを何時(いつ)までも繰返しておったならば、世界の人類は消滅してしまう、こういうことになって来る。これでは困るから、どうかこの争いを止めることを企てようという説が、この一世紀間に大分現われて来た。初めて現われた時は欧羅巴(ヨーロッパ)だけであったのである。これはなかなか人間一世や二世の事業ではない。我輩が幾ら長生きをするというても、なかなか我輩の一世ではつきそうもないのである(拍手)。

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