南半球五万哩

3話 第一、南球往航日記(ホンコン、カントン、マニラ紀行) 三、ホンコンの実況

584字 約1分 2011年10月25日 公開

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 十一日、晴れ、かつ暖。午前七時、ホンコンへ入港す。ホンコンは台湾南部とともに熱帯圏内にあれば、わが内地の七月ごろの気候なり。船檣の湾内に林立せるありさまは、東洋第一の要港たるの名に背かず。海上より岸頭を望むに、四階、五階の洋館櫛比せるが、焼余の廃屋のごとくに見ゆるは奇観なり。これ、家屋の前面はシナ式に構造せるによる。横浜よりここに至る海路、一千八百五マイルあり。

横浜――神戸==三百四十五マイル、神戸――門司==二百四十マイル、門司――長崎==百五十マイル、長崎――ホンコン==一千七十マイル、合計一千八百五マイル。

 午前上陸、正金銀行支店および郵船会社支店を訪問して帰船す。当夕九時、英船仏山号に移りてカントンに向かう。ホンコンの夜景は海上より一見するに、全市万灯中にうずめらるるの趣あり。山媚水明に加うるに、この夜景をもってし、大いに吟情を動かす。

峰巒繞海海如湖、船与船連舳抱艫、入夜港頭更添趣、万灯光裏泛全都。

(山の峰が海をめぐり、それ故に海は湖のように静かである。船と船とはへさきを連ね、船尾をくっつけあっている。夜に入って港のあたりは趣を増し、幾万のともしびのなかに香港(ホンコン)のすべてがうかぶのである。)

香港の山につゝける電灯の、光りは星とあやまたれけり

 十時出港。通宵汽船、珠江にさかのぼる。ときに陰暦十三夕にして、淡雲を隔てて涼月を望む。すこぶる幽趣あり。

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