33話 第四、英国行日記 三三、英京ロンドン着
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七日、晴れ。朝霧のために林巒を望むを得ず。数回汽船、漁舟を送迎して転進す。穏波晴影、前夕のごとし。午後二時、ドーバー海峡を通過し、六時半、テムズ河口に入る。九時半、チルベリードックに停船す。喜望峰よりここに至る、六千百八十一マイルあり。これよりロンドン市中まで、さらに二十七マイルあり。
八日、晴れ。朝七時半、船よりおりる。喜望峰を辞してより二十三日目にして、はじめて陸地を踏むを得たり。ここに税関の調査を受け、臨時汽車にてロンドンに向かう。水谷猶象氏ドックに来たりしも、相会するを得ざりしは遺憾なり。ロンドン寓所を友人サンマース氏の宅に定む。午後、大使館を訪う。
七月九日(日曜)、晴れ。昨今ロンドンの気候は、あるいは暑く、あるいは冷ややかに、朝夕は秋のごとし、日中は夏のごとし。午前、郵船支店長根岸練次郎氏の宅を訪う。午後、ローマ教本山を一見す。
十日、晴れ。領事館、郵船会社および正金銀行を訪問す。当夕、同宿大場忠氏と歩を散じて、水谷氏の寓所に至る。ときに月まさにまどかなるも、その位置低く、光輝十分ならず。英国などに観月の雅遊なきは、これがためなり(当夕満月)。
十一日、晴れ。戴冠式場たるウェストミンスター・アベーを拝観す。式日当時の実況を示し、珍宝貴什を陳列せり。
十二日、快晴。水晶宮に往復す。イギリス領植民地の陳列館ありて、入場者群れをなす。
十三日、快晴。ハンプトン・コート宮に至る。庭園の百花、栄を競う。暑気強し。
十四日、快晴。午前、博物館および図書館に入覧し、午後、日英博覧会の跡たるイギリス領各州の共進会を一見す。当夕、根岸氏の宅にて日本料理の晩餐を設けらる。
十五日、晴れ。午前、ミルトン墓所に至る。また、スペンサー翁の故居をたずねしも探り得ず。今日は急に秋冷を催し、金風颯々の趣あり。
七月十六日(日曜)、晴れ。水谷、大場両氏とともに、もと王室の所有にかかりしエッピング・フォレストに遊ぶ。その森林数里にまたがり、樹下の清風襟を洗うに足る。