40話 第五、北極海観光日記 四〇、ラップ人種の生活状態
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二十七日、快晴。午前四時、船すでにリンデン湾に着す。人家四、五十戸の漁村なり。阜頭に三層旅館一戸、雑貨店一軒あるのみ。山上は雪色皚然たるも、海に面したる方は雪すでに消して、青草地に敷き、樹木も繁茂し、わが春野を望むがごとし。麦田あるも、その長さ七、八寸に過ぎず。駅道は縦横に貫通す。渓にそいて山隈に入ること十四、五町にして、ラップ人種の部落に達す。家屋は樹木を結び、その上に土を載せ、一見塚のごとき形をなす。頂上に煙出しの口を開く。屋内は床を張らず、木の枝を敷くのみ。中央に地炉ありて、自在鍵を用う。石をもって椅子に代う。夜寝るときは、毛皮を敷きてこれに臥す。わがアイヌの住家よりも劣等なり。衣類は獣皮にて作るも、決して洗濯することなく、ときどき日光にさらすのみなれば、垢のために黒く染まり、臭気はなはだし。赤子はこれを獣皮にて包む。その形、エジプトのミイラに似たり。平素トナカイを養いて生活す。実に太古の遺民なり。途中、あおばえに苦めらる。暑気七十四、五度に上がれり。夜に入り、二回小汽船に逢遇し、互いに汽笛を鳴らして過ぐ。今夜もまた終宵太陽の没することなし。夜半には天全く晴れ渡り、日光明朗、自然の美を現し、その風光奇にしてかつ妙なり。これを昨夜に比するに、前夕は夜半、太陽の全面地平線上にありしのみなりしが、今宵は太陽と水面との間に、さらに一個ないし二個の太陽をいるるべき余地を存せり。海上に停船およそ一時間、汽笛を吹くこと数回にしてようやく進航す。