65話 第八、南米東部紀行 六五、サントス港およびモンテビデオ港の所見
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二十八日、晴れ。午前十時、サントス湾に入る。河口をさかのぼりて埠頭に着す。林巒樹木鬱然たり。当港はコーヒーの輸出地にして、岸上積みて山をなす。
河口曲如蛇、市街連浅渚、埠頭一帯舟、皆載珈琲去。
(河口は曲がりくねること蛇のごとく、市街は浅いなぎさに連なって建つ。埠頭のあたりの舟は、すべてが珈琲を積んで行くのである。)
午後二時出港す。
二十九日、雨。終日大雨やまず。四面雲煙に遮られて、一物を見るあたわず、ただ海鵝の船を追いて来たるを見るのみ。午前、孤巌の海心に突出するを見る。晩に及んで雷鳴一回あり。南米の実況を七律をもって試吟す。
雨棹風車任去留、米南九月試春遊、尼川横断三千谷、安岳縦貫一百州、地底猶埋天賦富、民間誰講国防籌、茫茫沃野無人跡、到処只看青草稠。
(船や汽車にゆられてなりゆきのままに行き、南米の九月に春の遊楽をこころみる。尼川は幾千の谷を横断して流れ、安岳は幾百の州国を縦貫してそびえている。その地中にはなお天与の富が埋蔵されており、民間に誰が国防の計画を考えるのであろうか。茫々とひろがる沃野には人の踏み跡もなく、到るところはただ青草のしげるのをみるのみである。)
三十日、晴れ。風ようやく寒く、温計六十五度に下がる。雲波霧海遠望するあたわず。一回汽船に逢う。
十月一日(日曜)、晴れ。早天より陸地を見る。八時、ウルグアイ国首府モンテビデオ港に着す。ただちに小艇にて上陸し市街を通観するに、人口二十七万五千と称し、家屋は石造二階、三階を限りとし、高廈大館を見ざるも、市域やや広く、両側に海水を擁し、中間に小公園を挟みて、すこぶる趣あり。寺院多きもみな旧教に属し、日曜なれども参拝するもの少数なり。日本商店滝波および婦野両店を訪う。寒暖は六十度前後にして、往来の人みな外套を用う。午後十時、汽船ロンドン号に移乗して、アルゼンチン国首府ブエノスアイレス市に向かう。湾水濁りて、その色泥のごとし。