68話 第八、南米東部紀行 六八、宗教および教育の情況
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十月八日(日曜)、晴れ。午前、寺院三、四カ寺を訪う。当地第一の大寺は大教正の所住にして、外観装飾を欠くも、内部は壮大美麗を極む。本堂の内側、長さ五十三間、幅二十九間にして、九千人をいるるに足るという。余のこの堂に入るや、まさしく読経最中にして、僧侶十七人列座して読経す。しかして参詣人わずかに十五人、堂内寂寥たり。この一例に照らしても、上等社会の寺院に近づかざるを見るべし。ほかの寺院に至れば、五十人、百人の参拝者あり。もし、下等人の居住せる方面の寺院には、毎日曜満堂の参詣ありという。当国は旧教をもって国教となすにもかかわらず、宗教の勢力実に微々たり。ただ旧慣によりて堂宇を維持するもののごとし。午後、植物園、動物園を一覧す。すべてこの種の設備は、リオデジャネイロよりもやや整頓しおり、植物園内の区域を世界各国に分かちおるは妙なり。帰路、第一の墓地(北)を通覧す。その墳墓の壮美なるは、余のいまだかつて見ざるところなり。これに投じたる金額は、けだし幾千万円に上らん。夜に入りて少雨あり。
九日、晴れ。午後、第二の墓地(西)をたずぬ。その地域すこぶる闊大にして、旧教墓地、新教墓地、および異教墓地の区界を有す。またその一隅に、城壁のごとく煉瓦にて高く築き上げたる合葬場の設備あり。午後、図書館を一覧す。蔵書七万冊と称す。
十日、晴れ。午後、大塚氏とともに、普通教育を管理する学務局に至り局長に面会を得て、市内の学校参観を請いたるに、即時に快諾せられ、視学官長に命じて案内せしめらる。まずはじめに市内模範の小学校に至る。建築壮大、設備整頓、なかんずく生徒に対し、日々国旗の前に整列せしめ、国歌を奏して敬意を表せしむるは、愛国心を養成する新奇の考案なるを感ぜり。これより雑誌発行所に至り、最新式の印刷器械を一覧して帰舎す。
十一日、快晴。午前、視学官長の案内にて、師範学校に至る。校の内外ともに清美なり。生徒は女子のみ。当国の小学教員はほとんど全部女子なりという。午後、岡田氏とともに車行して、約二十マイル離れたる某氏の牧畜場にいたる。その設備は一大公園にして、植物園、動物園を兼設せるもののごとし。ここに無数の牛・羊・馬を畜養するうち、牛種最も多く、その肥大なること実に驚くべきものあり。馬にいたりても一頭数万円を価するものを有す。この日や春天清朗、軽風和日、野外の風光実に客懐を散ずるに足る。当夕、松浦氏の商店に招かれ、日本食の晩餐を具せらる。