南半球五万哩

69話 第八、南米東部紀行 六九、中学および大学の情況

909字 約2分 2011年10月25日 公開

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 十二日、快晴。午前、また視学官の案内にて男子の中学校を参観す。その校舎清美、その設備斬新、わが国の中学校の遠く及ばざるところなり。生徒は一級十五人ないし三十人を限りとし、極めて少数なり。連日諸学校参観の際、各校において茶またはコーヒーを供せらる。聞くところによれば、茶とコーヒーは時を限らず、来客に差し出だす風なりという。なんぞその風のわが国に似たるや。また、校内にてしもべを呼ぶに手をうつを見る。これまた日本風なり。当日はコロンブス米国発見の日にして、しかも大統領就職の祝日なれば、小学生徒二千人列を成し、国歌を奏し、大統領の席前に敬礼して過ぐるを傍観す。動止整然たり。当日、コロンブス発見の往時を回想して一詩を賦す。

希世壮図何物遮、閣竜究尽水天涯、当年移殖文明種、今作西洲万朶花。

(空前の壮大なる意図はなにものがさえぎるであろうか、閣竜(コロンブス)は海の果て天の果てに到達した。その当時に文明の種が移植されて、いまやこの西の国に多く文明の花が開いている。)

 午後、文科大学に至り、教授アンブロセチ氏の案内を得て、各教室をはじめ、図書室、博物室等を通覧す。その規模いたって小なり。博物室内に、南米より採出せる古骨遺物のみるべきものあり。また、日本の仏像仏具を所蔵せる一室あり。学生中に女子半数を占むるも珍しく感ぜり。これ、中等教育の教員を養成する故なり。当夕、同教授の私邸にて晩餐を授けらる。各室四壁みな古器物をもって満たさる。ここに数日間、教育会長の好意により、自動車をもって迎送せられたるを深謝せざるを得ず。

 十三日、晴れ。午前旅装を整備し、午後大本山事務所に至り、執事に面会し堂内を参観す。アルゼンチン国の宗教統計は、旧教一千十九カ寺ありて、信者四千人につき一カ寺の割合なりとす。新教は六十八カ寺あり。しかして旧教の僧侶の数一千六百人ありという。そのほかユダヤ教の会堂、イスラム教の会所もある由。旧教にては一個の大学を設置しおれり。当夕、告別のために岡田、松浦、大塚三氏を料理店に招きて晩餐をともにす。大塚氏は滞在中各所の案内を兼ね、通訳の労をとられたるは、特に深謝するところなり。夜十時、汽船ブエナス号に投じて出航す。

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