南半球五万哩

7話 第一、南球往航日記(ホンコン、カントン、マニラ紀行) 七、太陽直下の風光

1,036字 約2分 2011年10月25日 公開

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 十七日、晴れ。午前上陸、暑さを恐れてただちに帰船す。午時出帆して木曜島に向かう。進航中は涼風入り来たり、かえって暑さをしのぐにやすし。

 十八日、炎晴。穏波軽風、朝来ときどき小巒州の波間に隠映するあり。午時太陽を仰ぐに、頂天よりやや北方にあるを覚ゆ。船中に遊泳場を設け、朝夕客をして浴泳をなさしむ。夜に入り黒雲四方に遮り、はるかに電光を見るも、雷雨来たらず。

 十九日、炎晴。早朝わが船海峡に入り、左右に林巒の鬱然たるを指顧して過ぐ。これより海ようやくひろく、終日また山影を見ず。風あれども風また熱し。夜に入るも暑さなお減ぜず、海水の温度は八十度に達し、甲板上に横臥するも、なお発汗を免れず。朝六時に日昇りて、夕六時に没し、没後ただちに暗黒となる。まことに昼夜平分なり。これ、赤道の近きを知るに足る。幸いに風波穏やかにして、船の動揺を覚えず。

呂宋海上向南東、吹送炎氛赤道風、午下知吾皇国遠、太陽已在北天中。

呂宋(ルソン)の海上を南東に向かい、ほのおのような大気を送って赤道の風が吹く。ひるさがりにわが皇国の遠いことを改めて思う。太陽はすでに北天の中央にある。)

 また、五絶二首を得たり。

太陽直下洋、水与風双熱、電扇送涼来、人皆呼快絶。

(太陽の真下の海は、水と風とふたつながら熱い。扇風器が涼しさを送ってきたので、人々はこぞって快よさこのうえなしという。)

熱帯圏中路、火輪蹴浪趨、暮天雲断処、夕日赤於朱。

(熱帯圏の航路に、双輪の船は浪をけちらして走る。暮れなずむ空の雲の切れ間に、夕陽が朱よりも赤く染めてしずむ。)

入日影いとしも空に赤ければ、むべ赤道と名をつけにけむ

 二十日、炎晴。朝来、驟雨二回来たる。一帯の連山に接見す。これ、オランダ領セレベス島なり。軽風平波、前日のごとし。暑気いまだ減ぜず、室内に入れば満身たちまち発汗す。夕陽の没せんとするや、満天紅を流し、その自然の美は到底画工のよく写すところにあらず。当夕九時、まさしく赤道を経過す。ときに汽笛一声を放ちてこれを報ず。これより船員の妖怪行列ありて、一大喝采を博せり。海上は無月暗黒、ただ中天に点々、四、五の星宿を認むるのみ。

自辞郷国未三旬、船入他球節物新、孤客何無多少感、始為赤道以南人。

(日本を旅立ってからまだ三十日にもならず、船は異域に入ってしるしの物も新しい。一人旅の身にとってもどうして多少の感慨なしといえよう。はじめて赤道より南に身をおく人となったのだから。)

赤道を踰えししるしか南より、吹きくる風のいとも涼しき

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