2話 第一、周遊の目的および太平洋紀行の部 第二、政府の事業は民間の事業に及ばず
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政教子曰く、山高くして大ならざるものあり、大にして高からざるものあり、その高きものは衆目に触れやすし。ゆえに、人これを指して高山峻嶺と称す。その低きものは、人その山たるを覚えず、ただこれを広原平野と呼ぶのみ。しかして、この二者中いずれが最も地球の重量を成すに加わりて力ありやというにいたりては、その低きもの一歩もその高きものに譲らざるのみならず、かえってはるかにその上に出ずるなり。今、政府の事業たる高山危峰のごとし、民間の事業たる広原大沢のごとし。もし、その品位の高低を較すれば、民間の事業はあるいは政府の事業に及ばざるも、二者中いずれが最も一国の重量を成すに加わりて力ありやというにいたりては、政府の事業は民間の事業に及ばざること遠し。畢竟するに、政府の事業それ自体民間の事業の一部分にして、ただその品位のやや高きものなるのみ。しかるにわが国、維新以来、人の汲々孜々として力を改良振起に尽くしたるものは、政府の事業もしくは会社の事業にして、最も衆目に触れやすきもののみ。ゆえに、これらの事業は大いに進歩の実跡を見たるも、その衆目に触れざる事業にいたりては、いまだ寸分も進歩の徴候を見ず。例えば、風俗交際のごとし、精神気質のごとし、人物人品のごとし、徳義のごとし、礼節のごとし。その改良は一国の改進に欠くべからざるものにして、いまだ一人のその意をこの点に注ぎしものあるを聞かず。ゆえに、余はこれよりもっぱら力をこのことに用いて、政教の一分を補い、治道の万一を助けんと欲するなり。