47話 第二、米国ならびに大西洋紀行の部 第四七、富国策
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政教子、ニューヨークより汽船に乗じ、まさに英国ロンドンに至らんとす。その船、美にして大なり。上等船客四百余名、その十分の九は、アメリカ人のフランス、スイスの間に遊ぶものなりという。友人曰く、フランスの富をなすゆえん、年々外国人のその地に来たりて金を散ずるによると。政教子このことを聞きて曰く、日本国の富をはからんと欲せば、外国人の来遊を待つの策を立つるよりほかなし。わが国今日の勢い、商業、工業を興して輸出品を増し、もって外国の製産と競争し、もって外国の金を入れんとするは、ただに難事なるのみならず、今よりその策を立つるも、十年ないし二十年以内に成功を期すべからざるは明らかなり。かつその策を立つるに、あらかじめ夥多の資本を要するをいかんせんや。これに反して外国人の来遊を待つの策は、いたって実行しやすき方法なり。
その方法は、ただ内地の都会および名所に西洋風の旅店を新設すると、土地案内道中記を作りて広く外国人に配布するとの二条にほかならず。しかして、わが国は天然にこの策を立つるに適するなり。第一に、気候温和にして、夏は暑を避け冬は寒をしのぐに便なること、第二に、土地、風景に富み、山水の美勝、いたるところに存すること、第三に、陸に天然の温泉あり、海に天然の浴湯あること、第四に、日本は旧国なるをもって、歴史上の旧跡はなはだ多きこと、第五に、古刹旧社そのほか、古代の美術・奇観、今なお存すること等、みな外国人の来遊を引くに最も適するなり。ゆえに余は、国を富ますの策は、西洋風の旅店を立てて外国人を引くにほかならずという。