5話 第一、周遊の目的および太平洋紀行の部 第五、国の本は精神にあり
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政教子曰く、国の本は兵力にあるか、商業にあるか、金銭にあるか、学問にあるか。もしこれを兵力にありとするときは、兵力の本はなににあるかを知らざるべからず。もしこれを商業にありとするときは、商業の本を知らざるべからず。金銭、学問またしかり。余をもってこれをみれば、国の本は人にあり、人の本は精神にあり、精神ひとたび定まりて、初めて国家の富強を講ずることを得るなり。兵力も商業も学問もみなこの精神によりて、初めてその活用実功を見ることを得るなり。しかして、その精神を一定するの法は教育によらざるべからず。そのいわゆる教育は、ひとり学校の教育をいうにあらず、ひとり知力の教育を指すにあらず、社会百般の事々物々、政治、宗教、人情、風俗より天文、地理、気候、地味にいたるまで、いやしくもわが体外に囲繞せる万象万化、みなことごとくわれを教育して一時も休まざるものなり。ゆえに、人もしこの種の教育法を講ぜんと欲せば、事々物々について、そのわが精神上に及ぼすところの影響、結果を考えざるべからず。かくのごとき教育は、もしこれを学校の小教育に比すれば、実に大教育といわざるべからず。余は、この大教育をもって自ら任ぜんと欲するものなり。