3話 人工衛星とゴルフ
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先日アメリカで、四匹の二十日鼠を人工衛星に入れて打ち揚げた話は、日本の新聞にも出たことと思う。その前に二匹の猿を長距離ロケットで打ち出し、しばらくの間、宇宙旅行と同じ条件において、無事地上に取り戻すことに成功した。それで今度は、本当の人工衛星に二十日鼠を入れて、それを無事地上へ帰らせて、スペース旅行の生理的影響を調べようとしたのである。
ロケットを打ち出すときは、おそい速度で大気を通過し、真空に近くなってから、第二段、第三段の発射で、超高速度にする。この場合は、空気との摩擦は、大した問題でない。しかし地上へ回収するときは、超高速度で大気内へ突入するので、流星と同じように高熱になって燃えてしまう。それで生物を入れた人工衛星の回収は、非常にむつかしい問題である。しかしそれも現在では解決されている。
ところで今度の二十日鼠の実験は、人工衛星自身の失敗で、不成功に終った。もし無事に生きたまま地上へ回収されたら、つぎはいよいよ人間を載せた人工衛星という段階になりそうであった。
しかし此処で一つ大きい問題があることを忘れてはならない。それは現在の人工衛星打ち揚げ装置、すなわちロケットは、恐ろしく非能率的、したがって、非経済的なものであるという点である。
二十日鼠というのは、一番小さい鼠で、四匹としても、手のひらに乗るくらいのものである。ところがそれを打ち出したロケットは、恐ろしく大きいもので、全重量は五十四トンあった。五十四トンもの重量のものを打ち揚げ、大部分は燃料であるが、それを燃しつくした揚句、ごく小さい人工衛星をつくり、その中に二十日鼠を四匹入れられるというのであるから、まるで話にならない。大砲で南京玉を打ち出すようなものである。
人間を乗せられる人工衛星となったら、それこそたいへんなもので、小さい駆逐艦くらいのものを打ち出さなければならない。一回や二回は無理をしても、どんな大国でも、そういうものをどんどん打ち揚げることは、経済的にいって、とてもつづくまい。宇宙旅行となったら、そのまた何十倍何百倍ということになろう。
それで何か動力源として新しいものを使うか、別の原則が発見されない以上、宇宙旅行が実際に可能になる見込みは、今のところ一寸ない。
こういう話をしたら、或る友人から、それは学者の狭い考えだと、一蹴された。その友人の説は次のとおりである。
五十四トンのロケットで、四匹の二十日鼠を打ち出すのと似たことは、現在すでに他にもたくさんある。
その一例はゴルフである。何十町歩という土地を整地して、芝を植えて、毎日手入れをしている。そしてその広大な土地で、直径三センチの球を、小さい穴の中に転がし入れて喜んでいる。それが人間であるから、人工衛星の競技は今後もますます盛んになるであろうというのである。