雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート

13話 五月二十四日

670字 約1分 2017年6月19日 公開

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「先生が、貴女のところにウィスキーがあるっていうんですけど――」

「あらそう、どうぞ」

 六月の御誕生日の御祝にと思ってとってあった品だったけど。夕食を持参してお手伝いにいく。七人のお客様と私。野原さんのお隣りで飲む。ウィスキーの甘味な舌ざわり。皆さんに喜ばれて、今宵の私の心も酔う。放送劇団の人達。綱さんや、加藤さんのお話――懐かしい。

“すみれ”で二次会。野原さんの楽しいベレー帽から、話は咲いて……、人に喜びを与え得る人はいいなあ、そして、人に悲しみを与え得る人もいい。そして、この二つのどちらかしか、世の中に生きていく強さはないでしょう、と野原さんと握手。そういう御方と一緒でなければ、こうして酒席へなど、私は、はべりませぬ。今夜は私の顔も赤い。真実のことを、ちょっと語ってしまう。

「斜陽」の御婦人も御一緒だったけど……。

 先生、彼女、野原さん、桜井邸へいかれる。

“ヴィヨンの妻”――あの奥さんは幸せだと思うわ、野原さん。

 本当にそう思いますか?

 本当よ!

 本当かなあー、信じられないなあー。

 アラ、本当にそう思うのよ。ああいう奥さんなら、大谷は幸せよ。なんていうか、カヴァーされているというのか……。

 そうなんですよ。うれしいね。幸せなんだ。

 貴女、偉いね。

 偉くなんかないわよ。当り前のことよ。ノスタルジャーがあるというのかしら。

 あれを分かる人というのはいないんだ。

 あら、何処かには、きっといてよ。そう信じて生きなければ余りにも寂しいじゃありませんか、ねえ、そうでしょう。

 さあさあ、飲みましょうよ。

 ――サッちゃん、大いに酔う。

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