雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート

16話 六月十日

345字 約1分 2017年6月19日 公開

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 苦労しています。

 三鷹では生まれてはじめての苦労でした。あの、つらい塚本さんの雰囲気。私にはお上手など言えません。よく勤めていられると驚かないで下さい。思い出すと泣けてくるのです。ですから努めて、考えまいとしてますの。三鷹から離れて住みたくないばっかりに、色々のものを棄てました。

 生活の方針も変わってきて、ああ、もう、生きていることが、つろうございます。愛人をもって、夫の生死を案じ、第三者からコヅかれて、それでも黙って生きているのです。私が死んだら一言の挨拶も塚本さんにはいりません。義理も充分果たしてありますし、教養のない主人に使われる人間の、まあ、何と可哀想なこと。

 貴方を知らないでいたのなら、もう、ずっと昔に、三鷹を離れておりましたものを。貴方の知らない苦しみを味わって……。

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