28話 八月二十八日
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今日でもう三日目。二十六日のひるま、西山方を出た道端で太宰さん吐く。お酒のカクテルをしたためでしょうか。御体が本当に弱られたのだな、と責任もある私の体。痛ましい気持ちがして、ごめんなさいと心で詑びる。
「少し我儘なさって。養生なさって下さいね」
「有難う」と九月十二日までのお別れ。
病気したら承知しねえぞ、なんて仰言りながら、御自分が先に倒れてしまわれるなんて、御伺いできないじゃありませんか。私いつでも御一緒に逝きます。
昨夜九時半ごろ裏へ伺ったら、もう雨戸が下りていて皆様お休み。
「ね、思ってね。来てね。ときどきあそこへ来てね」って。垣根の近くまで寄って行ったらまるで新派のセットのような感じの家。お庭先が美しく掃かれていて、心地よい感じ。(注・太宰家の間取りが記してある)お休みなさい太宰さん。鼻血なんぞお出しにならないで。今日、二時ごろお近くまでいく。一つ手前の通りを入って、畑の手前から眺める。お庭へ出てでもいられたら、きっと分かるのに、何故、時間と場所を御約束しておかなかったのだろうと悔まれる。
昨日も思い出して涙が流れ、本を開いては愛しまれる。
お別れしてから、急に背中がだるいような気持ち。血を吐きたい。思って下さる? 思って下さるの? 御体大丈夫? 御大事にネ。
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「野原と野平は可愛いよ。ね」
「しかし、ああした雑誌社の空気は人間に悪いね」
「二人ともやめたいって言ってましたわ」
「それがいいね」
野原さん達は太宰さんの御言葉を、一体どういう心で聞いているのかしら。真面目に、素直に、きいているのかしら、死んでしまう人ですのに。そして、この世で最もいい方でしょうに。駄目よ、しっかりしてよ。卑しい人にならないで下さいね。
夜半にめざめたら、あなたが夢を見て笑った顔を思い出しました。