3話 五月一日
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“単なる友達として異性と遊ぶことすら、現代の若人にはできない。幸せを得ることを知らない”――これは二週間ほど前の頃であったろうか、津軽の故郷から、御上京なさった御親戚の青年お二人と、御一緒に御逢いしたときの御言葉である。あの時は、丁度 dependents house の帰路で、薄ら寒い夜だったと記憶している。案外渋いネクタイ(紺地にサイコロのような感じのする模様のある)の好みに、ちょっとお顔を見直してから、いろいろ想像を逞しくしてみたものだった。
愛情というものは、嫌いでない人以外には度重なるうちに、自然に身に沁み込んできてしまうものであろうか。型破り(悪い意味でなく)な先生の性格に引きずられてしまったものであろうか。キザなようだけれども、先生はいいものをたくさんもっておられる。
好きだ!
亀井先生に、うなぎやさんでお目にかかる。早川さんと御一緒。一度、省線の中で、夜遅くおみかけしたことがあったのと、亀井先生のお書きになった島崎藤村の御写真とで、それと知る。評論家と、作家との原稿一枚の値がどうの……とは。食べねば生きていかれない人間なんですものね。サルトルという作家の名前を知る。岡本かの子の、生々流転のことどもや、いい人でしょう、と紹介された私のこと。大きなグラスに盛られたビール。ウィスキーに入れた炭酸。
「お酒を飲んで、もうこれ以上飲むと道に寝てしまうという頂点になると、彼はいつもクシャミをするんですよ。風邪ではありませんよ。貴女、よく覚えておおきなさい」
温かい雰囲気。御送りする。