4話 四 デイノソウルスの卵
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これもある夜の応接間での話の中の一つである。イルストラシオンに出ていたツタンカーメンの遺物の写真を見せて貰っていた時の話のついでであった。
今日のタイムスを見ると、例のゴビの砂漠でデイノソウルスの卵を見付けたアンドリウスが、また中央亜細亜へ二年とかの計画で、何百頭とかの駱駝と途方もない人数の人とを引連れて出かけたようだ。あの辺を人類発生の地とみているらしいので、その遺跡を探すためにあの砂漠をさぐって歩くのだそうだ。とても日本人には出来ないな。あんな事になるととても亜米利加にはかなわないね。金の有る無しにかかわらず、日本人だったら、たとえ金を出す人があっても、宛もないあの中央亜細亜の砂漠へ二年の計画でそんなものを探しに出かける人があるだろうかな。勿論売名的な男にならあるだろうが、まあ大学教授位の程度の人でそれだけの意気の有る人がいるだろうか疑問だね。そういえばエベレストの英国の登山隊も相変らず今年もまた計画しているそうだが、これも日本人にはあんな風には出来そうもないな。
オンネスの所へ行った時、液体ヘリウムを作る処を見せられたが、どうも大したものだったことを覚えている。こっちの室で液体空気を作って、それを次の室へとうとうと流してやって、まるで水かなんかのようにどんどん使っているんだからな。金のことじゃ亜米利加にかなわないし、そうかといってオンネスの所みたいに世界の名物になるほどの事も出来ず、日本ももっと科学に力を入れて本気でやらなきゃ、いつまで経っても外国から尊敬なんかされないよ。尊敬されなきゃ排日などされても仕方がないじゃないか、こっちが騒げば騒ぐほど、排斥すべき劣等国民だと思われるだけだ。いくらポンピアンクリームや耳隠しを排斥したって、日本が亜米利加から尊敬されるようになるまでは排日は君なかなか止まんよ。そんな事に騒ぐよりも不燃性水素でも作って見給え、排日なんか一辺に止んでしまうから。
先生は、辞して帰る時、玄関まで送ってこられて、私が靴の紐を結んでいるのを立って見ておられながら、「デイノソウルスの卵が見付かったって人間がどうなるというのじゃないが、……それだから益々面白いんだなあ」と独言のようにいっておられた。